ずば抜けた安定感、あとは「細かな洗練」に期待
今回のテスト中に感じたことがひとつある。それは「安定性」だ。OSに64bit版のWindows 7 Professionalを搭載していること、CPUパワーに余裕があること、そして、動作リソースに影響を与えるAV系アプリケーションが搭載されていないことなどもあってか、S9はとても安定している。
実は、BBenchを使ったテストをしていると、時には動作の不安定さにより再テストが必要になることがある。それはBBenchの問題ではなく、長時間のテスト中に大量のウェブ(時には数十を超えるページが開きっぱなしになる)を扱う関係上、マシンパワーの足りない機種では不安定になりがちなのだ。通常の使用では、なかなかそこまで行かないので大きな問題ではないし、再現性が低いのでそれを大きな問題とすることは難しいのだが、テスト時の傾向である程度感じられるところはある。
S9では、これが非常に安定していた。発熱も当然少なかった。こういった部分は、繰り返しになるが「仕事のための機械」としての信頼性につながる。
省電力設定にしてもそうだ。ここまでくれば、もうヘタな小細工をするのがばからしくなる。液晶バックライト輝度はともかく、ほかは自分が使いたい設定で使える。それもシステム側がしっかりと面倒をみて、バッテリー持続時間を維持してくれるからこそ、信頼して使えるというものである。
そういう意味でも、S9は「仕事向けのパソコン」として、完成度を着実に高めている。こうなると、残る些細な点が気になってくる。
例えば、レッツノートのアイデンティティーでもある丸形のタッチパッドは、今の水準ではちょっとサイズが小さい。最近は、パッドが大きめの機種を使う機会が多いためかもしれないが、「もう一回り大きくしてくれた方が使いやすいのに」と感じることが多かった。
この小ささは、おそらくはスクロールのためにホイール外周部を撫でる動作をする際、動かす範囲が狭くなるように、との配慮でもあるのだろう。だが、パッド外側のインジケーター部の半分くらいまでなら、サイズを上げても問題ないような気がする。パッドの感触は良好だが、ボタンは押した際の腰がなく、ちょっと気に入らなかった。
また同様に気になったのは、本体左側から飛び出すACアダプターの「コネクター」だ。根本での断線が起きにくい、非常にしっかりしたものが採用されているのだが、コネクター部からケーブルにかけての部分が太い上に長いので、本体左側から「棒が飛び出ている」ような印象をうける。せめて位置が本体中央でなく「奥」ならば、あまり気にならなかったのだろうけれど。
そして、さらに贅沢を言えば、そろそろ「キーボードライト」が欲しい。プレゼン中や飛行機の中など、薄暗い場所ではキーボードライトが欲しくなるときが少なくない。ここまで「仕事の道具」を追求してきたのなら、簡易なものでいいので、キーボードライトを搭載してほしいと感じる。
とはいえ、これらの点は「あら探し」に近い。ノートパソコンとして、それだけ不満を感じづらい製品に仕上がっている、という証でもある。最近は、高価なモバイルノートへの投資が難しくなっているが、機械への投資を仕事で取り返せるレベルの人にとっては、現状「まずお勧めしたい機種」のひとつに仕上がっている。
- お勧めする人
- ・とにかくバッテリー動作時間が長いパソコンを探している人
- ・仕事用に信頼感の高いパソコンを求めている人
Let'snote S9(マイレッツ倶楽部モデル プレミアムエディション 評価機構成) の主な仕様 |
|
---|---|
CPU | Core i7-640M(2.80GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 12.1型ワイド 1280×800ドット |
ストレージ | SSD 256GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n、モバイルWiMAX、Bluetooth 2.1 |
インターフェース | USB 2.0×3、HDMI出力、アナログRGB出力、PCカードスロットTypeIIなど |
サイズ | 幅282.8×奥行き209.6×高さ23.4~41.4mm |
質量 | 約1.34kg |
バッテリー駆動時間 | 約14.5時間 |
OS | Windows 7 Professional 64bit版 |
直販価格 | 30万1750円前後 |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)。
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