訴訟でインテルと戦いつつもAm386シリーズを供給
話をメインストリームに戻す。1991年、AMDはやはりセカンドソース契約に基づき、「Am386DX」を投入する。このあたりの契約面は微妙で、AMDは「それ以前に結んだセカンドソース契約が有効である」としてAm386をリリースしたが、インテルはこの契約が無効だと訴えて、そのまま訴訟に持ち込まれることになった。厳密に時系列を整理すると、以下のようになる。
- 1985年10月にインテルがi80386DXを発表。同時にインテルは「セカンドソース供給を行なわない」と発表。AMDは1982年の契約に基づきセカンドソース契約を要求し、提訴となる。
- 1987年2月に提訴の結果として仲裁が行なわれ、「インテルはAMDにライセンス供給すべし」という結論が出るが、インテルが拒否。これを受けてAMDが提訴。この提訴は1994年に、米上級司法裁判所が仲介案を支持する判決を出して決着。
- 1988年にインテルはAMDをi286プロセッサーの特許侵害で提訴。1992年12月に一旦はインテルが勝訴するが、その後インテルによる提出書類の改竄が明らかになり、再審が行なわれて1993年4月にAMDが勝訴。
- 1990年後半、インテルは「386」という名称が商標権の侵害であるとしてAMDを訴えるが、1991年3月にインテルが敗訴。
このほかにも、逆にAMDがインテルを反競争行為で訴える(のちに告訴取り下げ)など、とにかくこの時期のインテルとAMDは、やたらと訴訟合戦を繰り広げていた。最終的に1994年12月、両社はそれまでの訴訟をすべて取り下げるとともに、クロスライセンスを交わすことで合意する。これにより、やっとAMDは80186のセカンドコピーを大手を振って製造できることになったほか、80386や80486についても理論上はセカンドソースに基づいてコピー品を提供できることになった。
もっとも、このクロスライセンスの締結をただ待っていたら、AMDの企業活動は止まってしまっただろう。当初Am386DXはセカンドソースを元に製造する予定だったが、1989年に方針転換。完全クローンの製品を、独自で開発することを決定する。
Am386DXは2年ほどで完成し、ほぼ同一周波数で同等の性能を得ることに成功する。加えて、インテルの80386DXは33MHz止まりであったが、Am386は40MHz駆動品がリリースされ、さらに価格が安いとあってかなり好評であった。しかし、1993年といえばすでにインテルはi486DX/50MHzをリリースしていた時期。そのため低価格向け製品のシェアは取れたが、486級を必要とする高価格帯は、相変わらずインテルが独占していた。
ちなみに、Am386DXはStatic動作品や低電圧動作品も用意したほか、外部バスを80386SX相当に16bit化した「Am386SX」も用意。これもStatic動作品や低電圧動作品を提供した。
さらに、このAm386SXコアをベースに周辺回路を統合したのが、1996年前後に登場したAMD初のSoCである「Elan SC300」である。これはワンチップにCPUコアとノース/サウスブリッジの機能を詰め込んだもので、組み込み用途向けを志向した製品だ。さらに、このSC300の内部回路を一部変更(PCMCIA I/Fを削除)したのが、1997年にリリースされた「Elan SC310」である。
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