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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第12回

パナソニックの3Dテレビ普及に向けた次の一手がはじまる

2010年08月02日 09時00分更新

文● 大河原克行

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3Dで撮って残す、トータルのソリューションを

 もうひとつの3Dワールドの提案は、3Dに対応した製品が続々と登場することを指す。

 すでに、3D対応のBDレコーダーを発売しているが、8月下旬に発売する民生用初の3Dビデオカメラや、デジタル一眼カメラ「LUMIX Gシリーズ」に装着することで3D撮影を可能にする二眼式交換レンズも年内を目処に商品化する予定だ。

LUMIX Gシリーズ用の3D撮影レンズもリリース予定

 「パナソニックの強みは、エンド・トゥ・エンドで3Dビジネスを展開している点。映画製作のためのカメラや各種映像機器を提供し、ハリウッドでも実績を持つ。また、3Dの標準化に向けた活動などにも深く関与しており、こうしたノウハウが、3Dワールドの実現、3Dリンクの実現に貢献することになるだろう。少なくとも年内には『3Dワールド』といえる状況を確立したい」とする。

 米ハリウッドには、パナソニックハリウッド研究所(PHL)を開設し、ハリウッドメジャーとの密接な関係を築きながら3Dコンテンツの制作に取り組んでいること、世界初となるプロ用一体型二眼式3Dカメラレコーダの投入や3D対応のプロ用プラズマディスプレイの投入。さらには、東京・六本木には3Dに関するオーサリングセンターを開設するなど、プロフェッショナルの世界においても同社の3Dへの取り組みは加速している。

 こうしたノウハウが、コンシューマ製品にも生かされるというわけだ。


セカンドフェーズに入ったパナソニックの3D戦略

 西口本部長は、「パナソニックの3Dテレビ戦略はセカンドフェーズに入る」とする。

 セカンドフェーズとは、これまでが体験してもらうフェーズであったのに対して、実際に3Dを楽しんでもらうフェーズに入ることを指す。その背景には、40型台の製品が投入されることでの3Dテレビの普及が見込まれること、そして、先にも触れたように、3Dに対応した製品が続々と登場することだ。

 「自ら作った3Dコンテンツを楽しむといった提案は、第2四半期以降の重要な課題だろう。人生において、かけがえのない思い出を3D映像として残すという価値を提供できるようになる。こうした体験を含めた3Dリンクの展開は、パナソニックの3D戦略において、重要課題として早急に取り組まなくてはならないテーマになる」

 パナソニックは、プロゴルファーの石川遼選手を起用し、「あたらしい世界を見よう。」をキャッチコピーに、3Dテレビを積極的に訴求している。さらに滝川クリステルさんを起用し、より幅広い層に3Dテレビを提案していく考えだ。

 そして、これからはビテオカメラやデジカメを活用して、「使う」という提案が出てくることになろう。

 3D元年といわれる2010年において、「見よう」の提案に続いて、撮影し、残すという提案も可能にした点はパナソニックが、この分野に本気で取り組んでいることを改めて感じることができる。


一方で、3Dを訴求せざるを得ないという側面も

 一方で、パナソニックをはじめとして、電機各社が3Dの提案を加速しているのには、理由がある。というのも、今後1年間が3D普及の最大のチャンスだからだ。

 現在、2011年7月の地上デジタル放送への完全移行を前に、テレビの買い換え需要が促進されているが、それをピークにテレビ需要が低迷するのは明らかだ。業界関係者の間では、2011年以降の薄型テレビの国内販売台数は、現在の半分以下の市場規模になるとの見方も出ているほどだ。

 そして、テレビの買い換えサイクルを考えると、少なくとも7年以上は買い換え需要が顕在化しないことになる。

 つまり、需要が集中している2011年7月までに3Dテレビの導入が少ないと、その後の3D対応の各種製品や、3Dコンテンツの販売などにも影響がでることになるのだ。

 電機各社にとってみると、2011年7月までに3Dテレビをどれだけ普及させるかが、その後の3Dビジネスに大きな影響を及ぼすことになる。だからこそ、電機各社は、3Dの訴求に必死なのだ。

 コンテンツがまだまだ出揃わないなかで、「期待感」でどれだけ3Dテレビを普及させことができるのか。各社の腕の見せ所でもある。

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