P6アーキテクチャー普及の立役者
Pentium IIとCeleron登場
とはいえ、デスクトップ向けCPUには何らかの策を講じないといけないのも明白だ。そこでP6のコアだけを利用して、2次キャッシュはスピードを半分(Pentium Proはコアと同じ速度で動いていた)に落として容量を倍に増やし、さらにMCMではなく1枚の基板にCPUとキャッシュを実装する形でコストを下げたのが、1997年4月に登場した「Klamath」コアの「Pentium II」である。
Pentium IIでは16bit演算性能が改善されてMMXも搭載されたので、ここでやっとPentiumに負けない性能が実現された。これを0.25μmプロセスに移行させたのが、1998年1月に登場した「Deschutes」コアで、こちらは最終的に450MHzまで動作周波数を引き上げることに成功する。
このDeschutesコアは、いろいろなバリエーションに応用された。まず、サーバー向けには「Pentium II Xeon」というブランドを新規に作り、2次キャッシュを増量する形で最大4プロセッサー構成に対応させた(パッケージも大型化したSlot 2が使われた)。またモバイル向けには、サイズをギリギリまで絞った独自のパッケージを用意した。
ちなみに、Deschutesより前の1997年7月に「Tonga」が出ているのは間違いでもなんでもない。インテルとしては早めに、モバイル向けもPentiumからPentium IIベースに移行させたかった。ところが0.35μmプロセスのままでは、消費電力的にモバイルには厳しいため、0.25μmプロセスをまず最初にモバイル向けCPUに投入したわけだ。
また、既存のPentium Proユーザーに対するアップグレードパスとして、無理やりSocket 8形状のアダプタの上にDeschutesを乗せた「Pentium II ODP」なんてものも、1998年4月に発売されている。
だが何と言っても大きな動きは、低価格向けの「Celeron」の登場だろう。モノは単純で、DeschutesコアのPentium IIから、2次キャッシュを省いた形になる。価格は魅力的ながら、性能の低下が著しかった。そこでインテルはてこ入れを決意する。
モバイル向けにはとりあえずTongaをリリースしたものの、2次キャッシュが別ダイではパッケージサイズがかなり大きくなるのは避けられない。本格的なモバイル向けCPUには、2次キャッシュまでオンチップで搭載しないと無理がある。そのため、プロセスを0.22μmに微細化して、2次キャッシュをオンチップにしたモデルを「Dixon」として開発していたのだが、これを「Mobile Pentium II」として発売する前に、2次キャッシュ容量を半分に削った上でCeleronとして投入したのだ。
これが先にも触れた「Mendocino」コアと呼ばれるもので、プロセス微細化にともないオーバークロック耐性も上がり、しかも価格が安いとあって、多くの自作PCユーザーが争うようにこれを買い求めた。特に「Celeron 300A」(66MHz FSBで300MHz動作)を100MHz FSBの450MHz動作で使うのは、定番と言っていい使い方になる。オーバークロックしたCeleronは、DeschutesコアのPentium II-450MHzを上回る性能を示す場合もあり、インテルにとっては、多少自分で自分の首を絞める結果になったのはちょっと面白いところだ。
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