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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第120回

無線インターネットに「二度目の正直」はあるか

2010年07月07日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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「第2のインターネット革命」は可能だ

 他方、ソフトバンクモバイルはコンビニエンスストア「ミニストップ」の店舗に同社専用の無線LAN基地局を置くと発表した。現在はスターバックスなど首都圏の4400ヵ所で無線LAN基地局が利用可能だが、これを本年度内に2000ヵ所増やし、全国に拡大するという。これを利用すれば、3G携帯電話の電波が届かない場所でも、iPhoneやiPadが使えるようになる。

 これは一見、携帯電話事業者のビジネスとしては奇妙にみえる。無線LAN基地局経由の通信は無料なので、3Gの通信量が減って通信事業者は損をするからだ。しかし実際には、現在の携帯端末はほとんどがパケット定額サービスなので、通信量が減っても料金にはあまり影響しない。それよりiPadなど大きなデータを使う端末が増えたため、屋内の通信データを無線LAN経由で電話回線に逃がさないと、3Gの基地局が負担に耐えられなくなってきたのだ。

 こうした状況を打開する切り札として期待されているのが、UHF帯のホワイトスペースだ。これは来年、アナログ放送が終了すると空く予定のテレビが使っていない周波数で、全国平均で200MHzぐらいある。これは今、携帯事業者が使っている全周波数のほぼ半分にあたる広大な帯域である。FCC(米連邦通信委員会)は2008年、UHF帯を免許不要で無線LANに開放することを決めた。日本でも、原口総務相の「原口ビジョン」で「ホワイトスペースの有効利用」が明記された。

 UHF帯の電波の届く範囲は2.4GHz帯よりはるかに広いので、携帯電話と同じぐらいの置局密度でカバーできる(免許条件にもよるが)。これを使って携帯電話事業者が公衆無線を行なえば、3Gのように信頼性は高くないが、はるかに安く高速の無線通信が可能になる。つまり15年前に固定回線で起こった「電話からインターネットへ」の転換が、無線で起こるかもしれないのだ。この「第2のインターネット革命」によって、ユーザーは広い帯域を使えるようになり、新しい企業が無線インターネットに参入して成長も期待できる。必要なのは、電波行政の改革だけである。

筆者紹介──池田信夫


1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退社後、学術博士(慶應義塾大学)。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラブックス代表取締役、上武大学経営情報学部教授。著書に『使える経済書100冊』『希望を捨てる勇気』など。「池田信夫blog」のほか、言論サイト「アゴラ」を主宰。

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