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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第60回

ICT産業を復活させるホワイトスペース

2009年03月25日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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技術ナショナリズムがイノベーションを殺す

緑色で表示した日本とブラジルのISDB-Tは世界的に見れば、ごく一部のようだ。「Your Electronics Open Source」より引用

 ある外資系メーカーの経営者から、こんな話を聞いた。業界の会合で、総務省の局長に「おたくに高いライセンス料を取られるので、日本のメーカーは全滅だ」と強く批判されて驚いたそうだ。その局長は「国産メーカーを守るために総務省は全力を挙げる」と言って、南米に自ら出向いて日本の地上デジタル放送を売り込んでいるらしい。

 たしかにブラジルでは、日本の地デジ(ISDB-T)が採用されている。しかし全世界をみると、右図のように欧州規格(DVB-T)が圧倒的だ。ISDB-Tが「南米標準」になったところで、第2世代携帯電話のPDCのような「ガラパゴス規格」になり、日本メーカーが世界の技術に取り残されるのが関の山だろう。

 このような技術ナショナリズムが、成功した試しは一度もない。かつて総務省が「ユビキタス」とかいって国を挙げて応援したICタグは、どこへ行ったのだろうか。経産省の進めている「情報大航海プロジェクト」は、コンテンツ配信もプライバシー問題も著作権も扱うなど投資が分散しており、何をやっているのかよく分からない。このような「日の丸プロジェクト」にエネルギーを集中したおかげで、日本のICT(情報通信技術)産業は世界市場で孤立し、ほとんど壊滅状態だ。

 日の丸プロジェクトが失敗するのは、イノベーションは技術革新だと思い込んでいるからだ。いくらすばらしい技術を開発しても、黒字が出なければビジネスとしては成立しないのだから、イノベーションでいちばん大事なのは、技術ではなくビジネスモデルである。アップルのiPodやグーグルのように既存技術の組み合わせによってすぐれたサービスが実現される一方、日本メーカーには特許はたくさん持っているが収益の上がらない企業が多い。この状況を打破するには、政府が指導するのではなく、なるべく多くの実験を行なって市場によってイノベーションを育てる必要がある。

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