SiSチップセットの歴史 その3
SiSのAMD向けビジネスはUMCとの対立や競合に悩む
2010年06月07日 12時00分更新
ハイエンド/サーバー向けはNVIDIAやATIの進出で市場を取れず
2003年には、Athlon 64の投入に合わせて「SiS755」と「SiS760」が開発されていた。このSiS755とSiS760は、どちらもかなり早い時期にサンプル出荷や動作デモが行なわれていたが、SiS760の搭載製品が登場したのは、2004年に入ってからである(ロードマップ図には2003年9月と記載)。
SiS760はSiS755に、「Mirage 2」コアのGPUを統合しただけであるが、メモリーコントローラーがCPU側にあるため、画面のリフレッシュ動作でかなり苦労したらしい。そのため、CPU側にメモリーコントローラーがあるにも関わらず、それとは別にLFB(Local Frame Buffer)用にチップセットにもDDRメモリーを装着できるという、かなり苦しんだ構成となった。ただしその後も開発を進めた結果、なんとかLFBなしでも動作する構成とすることに成功、これが2004年11月にリリースされたSiS760GXである。
一方メインストリーム向けとしては、当初のSocket 754/940のみ対応から、Socket 939にも対応した「SiS755FX」を2003年11月にリリースする。さらも翌2004年3月には、PCI Expressに対応した「SiS756」をリリースする。
ただしSiS756をリリースした半年後には、NVIDIAの「nForce 4 SLI」シリーズなどの強力なチップセットがリリースされた。ディスクリート向けチップセットでこれらと競合してゆくには、最低でもデュアルGPUの構成が必要とみなされた。そこで当初は、2006年第1四半期中に「SiS756FX」がリリースされる見込みだったが、2004年のUMCによる買収以降の製品見直しの中で、キャンセルとなったようだ。
かつての自社生産を軸にしたロードマップであれば、とにかく生産量に見合う製品を売る必要があるので、ハイエンドにも積極的に進出する必要があった。しかし、UMCによる買収後の体制ではそんな必要はなくなったし、シェアが取れないのに進出しても痛手をこうむるだけである。その結果、K8(Athlon 64)向けディスクリートチップセットはこのSiS756で終わりとなり、以後はGPU統合チップセット方向に向かうことになる。
2005年3月には、内蔵GPUにMirage 1を採用した「SiS761GX」がリリースされる。2004年のSiS760GXでMirage 2を内蔵していたにも関わらず、SiS761GXではMirage 1に戻ったのは、「PCI Expressに必要とされる回路規模が大きくなりすぎ、GPUを小規模にしないと収まらないから」と、当時説明をうけた記憶がある。
この点については、プロセスを微細化した「SiS770」で、GPUをMirage 3に強化して対応する予定であった。また、SiS761GXとほぼ同じタイミングで、Sempron向けに機能を削った「SiS761GL」もリリースされる。
しかし、こうした形で製品を絞り込んだ結果として、SiSチップセットのシェアはどんどん落ち込むことになる。そこで起死回生の策として打って出たのが、SiS761GXをベースに2プロセッサー構成を可能にした「SiS761SX」である。なんのことはなく、2プロセッサーでの動作を検証しただけの製品ではあるが、SiSはこれを使ったリファレンスボードを当時の見本市「CeBIT」で展示するなど、一応は頑張ったようだ。ただしこれを採用したOEMベンダーは、当然ながら皆無であった。
これに続き、ロードマップ上は「SiS770/SiS771/SiS772」といったデスクトップ向けのほかに、SiS771をサーバー向けにした「SiS771SX」などもラインナップされていた。しかし、結局これらはいずれも製品化されず、幻のまま消えてしまうことになった。2005年後半から、AMD向けチップセットもNVIDIAとATIの一騎打ちの様相を呈してきており、SiSが入り込む余地などなくなってきた、というのがその理由である。
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