SiSチップセットの歴史 その3
SiSのAMD向けビジネスはUMCとの対立や競合に悩む
2010年06月07日 12時00分更新
Socket Aへの転換期に、インテル向けの改良から
始まったAMD向けチップセット
さてSiSチップセット編の最後は、AMD向けのロードマップである。AMD向けとしては、SiS編第2回で触れた、インテル向けの「SiS630」とほぼ同じタイミングでリリースされた「SiS730S」から始まる。構成としてはSiS630Sに非常に近く、Pentium II/III向けのSiS630SのCPUインターフェースを、Athlon用に切り替えただけ、と言ってもいいほどだ。
当時はすでにSlot AからSocket Aへの転換期にあたっており、Slot Aのマーケットではやや出遅れたSiSも、ここで何とか間に合った形だった。まずは200MHz FSBでリリースされるが、すぐにメインストリームは266MHz FSBに移り、逆に200MHz FSBはDuron向けといった扱いになった。それに対応して266MHz FSBのサポートを削った廉価版が、「SiS730SE」である。
これに続き、2001年4月頃には「SiS733」、同年6月には「SiS735」がそれぞれリリースされる。実はこれ、リリースされた順番が開発の時系列的には逆である。SiSは2001年1月に、SiS735をアナウンスしており、SiS733はそのサブセットである。にも関わらず、先に流通したのはSiS733で、SiS735はやや遅れることになった。
そもそもこの時期、SiSのほとんどのチップセットは、アナウンスから流通まで半年近いディレイが平気で存在した。その理由は、SiS編第1回で説明した、UMCでの生産停止の影響が非常に大きい。実際、DDR-SDRAM対応となったSiS735や、SiS編第2回で紹介したSiS635は市場でも人気を博していた。しかし、早く出荷を望むベンダーはかなり多かったにも関わらず、製造が滞って出荷できるものがない、という哀しい事態に陥っていた。
そんな状況下で、なぜかSiS733だけは少量出荷されたという、ちょっと不思議な状況になっていた。ちなみに、SiS733/735も見かけはワンパッケージだが、内部はノースブリッジとサウスブリッジの2チップ構成で、チップセット間接続にMuTIOLを使ったのが、SiS730Sとの大きな違いである。
また、SiS730SではGPUとして「SiS300」を搭載していたが、SiS733/735ではこれも省かれた。2001年9月にリリースされた「SiS740」では、省かれた内蔵GPUが「Real256」という形で復活することになる。ただし、SiS740は外部AGPポートを廃してしまったので、完全にバリュー向けとなっている。そののち、2003年8月にリリースされた「SiS741」では、再びAGPポートが復活している。いくらバリュー向けといっても、AGP無しなのはやはり都合が悪かったようだ。
ちなみにSiS741のリリースは、SiS740から2年ほど間が空くことになった。そのため、その間の製品動向を反映してか、400MHz FSBやDDR400へも同時に対応している。ちなみに搭載されたGPUの「Real256E」は、Real256の動作周波数向上版である。
さてGPUを持たないディスクリート向けとしては、2002年2月に「SiS745」がリリースされる。ここからAMD向けチップセットも、2チップ構成となった。SiS745とその翌年にリリースされた「SiS746」は、どちらも266MHz FSBまでに対応しており、違いはAGP 3.0への対応とかUSB 2.0の対応程度である。
この時期から、Athlon XPが333MHz FSBになったことを受けて、ほぼ同じタイミングでリリースされた「SiS746FX」では、333MHz FSBとDDR400への対応が、さらに2003年5月にリリースされた「SiS748」では、400MHz FSBに対応している。
このあたりでSocket A向け製品は終わりかと思ったら、そのあとにSocket AのSempronがリリースされたことを受けてか、SiS741からDDR400や400MHz FSBの対応を省いた「SiS741GX」が2004年に入ってリリースされた。さらに、2006年にはこれをベースに「SiS741CX」もリリースされるが、こちらについては後述する。
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