SiSチップセットの歴史 その3
SiSのAMD向けビジネスはUMCとの対立や競合に悩む
2010年06月07日 12時00分更新
ハイエンド向けに苦戦する中で、唯一光明を見出したかに思えたのが、組み込み向けチップセットであった。当時AMDは、K7(Athlon)コアを低消費電力化したCPU「Geode NX」をリリース。続いてK8製品も組み込み向けにリリースすることを明らかにしていた。
これを受けてSiSは、まずGeode NX用に「SiS741CX」とSiS746FXを組み込み向けに提供。さらにSiS755の組み込み向け提供や、「SiS760CX」「SiS761CX」といった新チップセットを組み込み向けに用意した。
SiS746FXやSiS755はデスクトップ向けそのままである。GPUを内蔵しないこともあって、消費電力は3W(SiS746FX)や2.8W(SiS755)と低く、これらは十分組み込み向けに使える範疇だった。一方のNVIDIAやATIのチップセットは、これよりはるかに消費電力が多く、このジャンルでは十分に勝算が見込めたのは事実だった。
このジャンルでの競合はVIA Technologiesだったが、同社はむしろ、自社CPUのC3/C7をベースとしたEdenプラットフォームに傾倒していた。そのためAMDプロセッサーを使う組み込み向けという範囲では、SiSが一番有利な選択肢だった。
だが、この期待もまた裏切られる。AMDは昔から組み込み向けを長く扱っていたのだが、その方針がころころ変わるため、さまざまなベンダーが採用を検討しつつも見送ってきた経緯があった。
例えば、AMDは2003年に米National SemiconductorからGeode CPUの製品ポートフォリオと開発部隊をまるごと買収。本格的にx86を使った組み込み向けに注力するかと思われた。2005年にはGeodeコアをベースにした「Geode LX」を発売するなど、一時期は確かにその方向性に向かっており、このままビジネスを進めてゆくかと思われた。
ところが、2006年のAMDによるATI買収に際して、AMDでは再び社内の方針を転換したようで、Geode製品ラインはそこから緩やかに廃止の方向に向かってゆく。K8を使ったソリューションはまだ生き残っていたが、それまでの「積極的に組み込み向けに製品を投入する」というよりは、「サーバー/デスクトップ/モバイル向け製品の中で、使いたいものがあれば提供してもよい」という方向に変化してしまった。こうなると、当然OEM筋としてもAMD製品を使っての組み込み向けビジネスが進展するはずもない。結果、どんどん組み込み向け製品も尻すぼみになってしまった。
こうした状況に陥った結果として、SiSは2008年にAMD向けチップセットの新規受注を終了。今では同社のデスクトップ向け製品やノート向け製品のウェブページを見ても、AMD向け製品は一切出てこない、という有様である。
「それでは同社は今何をやっているのか?」と言うと、次回で紹介するALiと同じく、民生機器向けのコントローラーに注力している形だ。元々同社は2001年に、ARMコアのライセンスを取得している。また、チップセットを扱う中でさまざまな周辺回路のIP(知的所有権)を自社で構築しているから、技術的な障壁は少ない。
もっともALiが台湾の半導体メーカー「MediaTek」の子会社として、この民生機器向けICのマーケットで大きなシェアを獲得できたのに対して、SiSは後ろ盾がUMCしかないという状況だ。今後どこまでこのマーケットで生き残っていかれるかは、少々不透明な状況、というのが正直なところだ。
今回のまとめ
・SiSのAMD向けチップセット事業は、インテル向けから遅れて1999年の「SiS730S」から始まった。当初はインテル向けのCPUインターフェースをAMD用に変えただけだった。さらに、2001年頃からUMCとの問題で製品供給が滞ってしまう。
・Athlon 64向けは、2003年に「SiS755」「SiS760」からスタートする。しかし、2004年頃からNVIDIAが強力なチップセットで市場を侵食してきたため、GPUなしのディスクリート向けは収束。サーバー向けにも進出するが、失敗に終わる。
・残る活路は組み込み向けだった。当初はPC向けの変更で対応していたものの、AMD自身の組み込み向けCPUに対する戦略の変更から、この路線も2008年には終了してしまう。
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