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Windows Serverで学ぶサーバOS入門 第20回

管理者のいない拠点をドメインに加えるための新機能とは?

ブランチオフィス用Active Directoryとバックアップ

2010年06月15日 09時00分更新

文● 横山哲也/グローバルナレッジネットワーク株式会社

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操作マスタ

 ドメインコントローラは、インストール時に機能の細かい設定は行なわない。しかし、ドメインコントローラには「操作マスタ」または「FSMO(Flexible Single Master Operation)役割」と呼ばれる5つの特別な役割があり、既定ではフォレストまたはドメインの最初のドメインコントローラに割り当てられる。FSMOの意味と内容は次の通りだ。

(1)スキーママスタ(フォレスト全体で1台)

 Active Directoryのデータベースに格納する情報の種類(スキーマ)を管理する。スキーマ情報を変更するのはOSのアップグレードのとき、Exchange ServerなどActive Directoryに対応した特別なアプリケーションを利用するときだけである

(2)ドメイン名前付け操作マスタ(フォレスト全体で1台必要)

 ドメインのツリー構造を管理する。ドメインの追加や削除を行なうときだけ必要である

(3)RIDマスタ(ドメインごとに1台)

 Active Directoryで作成されたアカウントは、作成したドメインコントローラによってSID(セキュリティID)と呼ばれる識別子が割り当てられる。RID(相対識別子)は、SIDの最後の部分を示す。RIDマスタは、新規アカウントのために500個単位でRIDの範囲(RIDプール)を各ドメインコントローラに割り当てる。RIDマスタが停止しても、各ドメインコントローラがRIDプールを使い切るまでは問題は発生しない

(4)PDCエミュレータ(ドメインごとに1台)

 Windows NT 4.0以前のクライアントにPDC役割を提供する。そのほか、時刻同期のマスタなど、さまざまな役割を持つ

(5)インフトラストラクチャマスタ(ドメインごとに1台)

 ほかのドメインのアカウントをメンバとして含むグループがある場合、アカウント名が変更されたことを検出し、ほかのドメインコントローラに変更を伝達する。インフラストラクチャマスタが停止した場合、アカウント名とSIDの整合性が取れなくなる可能性があるが、セキュリティ設定が失われたりするようなことはない

 どの役割も、一時的な停止に問題はないが、長期間停止していると運用に支障がある。そこで、操作マスタとなっているサーバを停止する場合は、停止前に役割を転送する。また、破壊された操作マスタの機能を復元するために、役割を占有できる。

 操作マスタ役割を持ったドメインコントローラが降格する場合、適当なサーバに操作マスタ役割が転送される。操作マスタ役割を明示的に変更する場合は、コマンドプロンプトでNTDSUTILコマンドを起動し、リスト1のサブコマンドを順次入力する。「変更コマンド」は表1のいずれかを指定する。

リスト1●ドメインコントローラの役割マスタを変更するコマンド。変更コマンドは表1の内容となる

表1●操作マスタの変更コマンド

 何らかの事情で、転送元の操作マスタが使用できない場合は、転送(transfer)ではなく占有(seize)を使う。ただしseizeした場合は原則として以前の操作マスタをネットワークに復帰してはならない。操作マスタが2台存在することになってしまうからだ。なお、GUIツールで転送を行なう方法もあるが、操作マスタの種類によって多少操作が異なるので今回は省略する。

(次ページ、「Active Directoryのバックアップと復元」に続く)


 

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