3モード×2種類を組み合わせるAFモード
次にピントを合わせるオートフォーカス機能(AF)に関して話をしたい。「さすがにAFぐらいは知ってますよ!」と胸を張る編集者H。「動いていない被写体はシングルAFモード、動きのある被写体はコンティニアスAFモードと切り替えて使えばいいんですよね?」とおっしゃる。
基本的にその考え方はいいのだが、D300Sではそもそもフォーカスポイントが51点あるので、そのどの部分にピントを合わせるのか? ということまでユーザーが決められるようになっている。
D300Sにはレバーで切り替える「シングルAFサーボ」「コンティニアスAFサーボ」「マニュアル」のフォーカス動作のほかに、「シングルポイントAF」「ダイナミックAF」「オートエリアAF」の3つのモードがある。その切り替えは背面のAFエリアモードセレクトダイヤルにて行なう。
漠然と風景を撮影するのであればオートエリアAFで十分。しかし、人物撮影やマクロ撮影などはかなりシビアなピントにもなるので、シングルポイントAFなどに切り替えなければならない。オートエリアAFのままだと、ピントを合わせる位置をカメラが誤認することが多くなるためだ。
D300Sではこの2つのAF動作モードを組み合わせてさまざまなピントの合わせ方ができるのだが、今回はシンプルでなおかつ一般的に使用されるシングルAFサーボモード時に、オートエリアAFとシングルポイントAFがどのような振る舞いの違いをするのか説明する。
「マルチエリアAF」モード設定時(左)と「シングルポイントAF」モード設定時(右)にファインダー内に現れるフォーカスポイントの表示の違い。マルチエリアAF設定時の表示は現れたフォーカスポイントすべてにピントが合っているというわけではなく、この中の1つが実際のポイントを合わせる役目を負うのだが、表示された部分についてはピントが合っているように見えるという意味である。シングルポイントAF設定時は、このポイント自体をマルチセレクターで変更することができる
オートエリアAFは読んで字のごとくカメラが自動的に51点あるフォーカスポイントの中から被写体を判別してピントを合わせようとするモードだ。この場合、先にも書いた距離や色の情報なども合わせて被写体の判別を行なう。ある程度被写体との距離が離れている場合においてはかなり有効なモードで、ピントはカメラ任せでユーザーはフレーミングに集中することができる。
しかし、極端に被写体との距離が近い場合や、レンズの絞りを開放近くにした人物撮影のときなどにピントがシビアになった場合においては少し信頼度が落ちる。ファインダー内で決めた構図の中で、どの位置にピントが合っていて欲しいのか自分に具体的なイメージがある場合はシングルポイントAFに切り替えて使用したほうがいい。
シングルポイントAFもその名の通り、51点あるフォーカスポイントの中からユーザー自身が自由にピントを合わせるべきポイントを指定できるモードだ。このモードであればカメラを三脚などに固定した状態でもピント位置を指定できるので構図も決めやすくなる。
シングルポイントAFでも被写体のちょっとした揺れや風の影響などでほんの少しだけピント位置がずれることがある。左の写真は右の写真に比べてほんの少しだけピント位置がずれてしまっている。マクロ撮影時にはこのようなシビアなピントが求められるのでシングルポイントAFに設定するのが安全である
上記のサンプルを見てもらえばわかるとおり、マクロ撮影時などでは1点にピントを合わせたいときなどはシビアなピント位置が指定できるシングルポイントAFが有効だ。
また、人物撮影時でも絞りの違いによって人物を浮き立たせて撮影したい場合、極端に被写界深度を浅くするために絞りを開く必要がある。この場合もシビアなピント位置が求められるのでシングルポイントAFモードでの撮影が安全だ。
絞りの違いによるピントの違い
上のサンプルのように、絞りを開けていくことで被写界深度は狭くなり、ピントが合っているように見える範囲も狭くなる。シングルポイントAFにして撮影したほうがピント位置を人物に固定しやすい。
このように、シビアなピントが欲しいときにはシングルポイントAF、カメラ任せにしてでも早くシャッターを切りたいようなスナップや被写体との距離が離れている風景などはオートエリアAFにするといいだろう。
というわけでAFモードもなかなか奥が深く、今回だけではその振舞い方の違いは紹介しきれないので、折を見てほかのモードについても紹介していきたいと思う。

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