このページの本文へ

AR~拡張現実~人間の“現実感”を高めるテクノロジー 第3回

変化を続け、成長するモバイルAR

2010年04月14日 18時00分更新

文● 丸子かおり ●撮影/笹川達弥、小林伸

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

目に見えないものをARで透視する

 松本さんが捉えるARとは、現実空間に情報を重ね合わせるだけでなく、自分が意識しなくとも携帯電話に内蔵されたセンサデータを使って「拡張された力」が実現できる状態などを考えているという。“透視”も自分の視覚を拡張する“拡張現実”であるし、例えば、電車に乗ったら携帯電話が“持ち主の電車に乗っている状態を判断して勝手にマナーモードになる”ことなど、自分が意識や操作をせずとも、携帯電話による「拡張された力」が実現できることなども広義のARと考えているそうだ。

 いっぽう、伊藤さんによると、現在の主な使い方としては、既存の情報を観ることで行動が終わってしまっている。けれど、今後は実際にその情報をクリックしてお店に持っていって割引を受けたり、その場所、その時間でしか得られないタイムセールの情報が得られたり、そういう“今の情報”を扱えるようにしていきたい、という。

実空間透視ケータイは、auの携帯に内蔵されているあらゆるセンサーをフルに使うことで携帯電話でのARを実現している

 そして、実空間透視ケータイは現在のβ版では、自分の周りのモノの情報のみセンサーで取得している状態だが、さらにはヒトをも透視することをひとつの目標として掲げているそうだ。

 例えば松本さんいわく、現時点において、センサーデータを使って人の7状態(歩行、走行、停止、自転車、自動車、バス、電車)を高確率で推定できている。そこからさらに、家族や友達の状態が携帯電話で表示されるような機能を作るために、センサーで取得した情報をネットワークでやりとりして、情報を共有させたいとのこと。実空間透視ケータイのゴールは「自分の周りの人やモノを把握している」ことだそうだ。

 ただし、プライバシーの問題ある。自分や周りの人の状況が把握できるようになると、提供者の意図とは異なる使われ方をしたりする可能性があるし、ユーザーにとって本当に必要なのはなにか、そのあたりを慎重に検討したいというのが松本さんの見解だ。また、携帯電話の場合、スマートフォンに比べて画面が小さく、タッチパネルが使えないというハンディがあるが、その携帯の小さい画面の中でどう情報を見せるのか、またキー操作だけで使うにはどういう風にしたらいいか、課題をクリアするための検討を続けていくという。

 現段階では、特定のスマートフォンだけではなく、一般の携帯電話でARというものを広範囲に届けたいというのが直近の目標で、驚きや面白さだけでなく、便利で使い勝手のよい汎用的なARプラットフォームとして本技術を育てていきたいという考えだ。

 そして現在、KDDIはAndroid搭載スマートフォンを発表し、頓智・ (トンチドット)と提携してAndroid版「セカイカメラ」を6月上旬予定でリリースすることになった。また携帯電話でも「実空間透視ケータイ」の機能とセカイカメラの機能が合わさった「セカイカメラZOOM」が2010年6月上旬から11月末予定の間、トライアルでサービスが提供される。KDDIのキャリアとしてのARへの取り組みはこれからが楽しみだ。

携帯電話のセカイカメラZOOM画面。左側がカメラビューで右側がアニメーションビュー、と実空間透視ケータイの機能が組み込まれている(提供:KDDI)

 また、コンテンツホルダーでは、フューチャースコープがAndroid携帯初のARアプリを作ったことが話題になっている。次はフューチャースコープが送る、ARアプリを見てみよう。

(次ページへ続く)

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン