さんけいの勝見文子社長によると、もともと模型メーカーに勤めていた父親である勝見健二氏が独立して前身である勝見商店を創業したのは1963年。以来、全国の博物館や資料館の建設が相次ぎ、古建築模型や展示工事を手がけてきた。江戸東京博物館や大阪城天守閣にある模型を手掛けたのもさんけいだ。
さんけいの勝見文子社長 |
コンシューマー向けの製品を手掛けるようになったのは2007年から。静岡ホビーショーや幕張で開催される全日本模型ホビーショーでは、精巧なペーパーキットが珍しく、ブースに人だかりができた。総勢14名の零細企業であり、ペーパーキット専門の職人がいるわけではない。博物館や資料館向けの建築模型やジオラマを作ってきた模型のプロたちが、それまで培ってきた技を紙製模型に注ぎ込んだのが「みにちゅあーと」シリーズなのだ。
「もともと製作してきたのは、古い町並みを再現するための建物が多かった。どちらが得意かといえば、電車よりも建物だけど、博物館などの模型ではお皿やヤカンなどの調度品まで再現することが多く、どんなものでも模型にできる技術がある」(勝見社長)という。社内には木材から木製部品を切り出すための工作機械が並び、「ここは撮影しないでください」と言われる秘密のエリアもある。
展示されている民家模型の内部を見ると、人物からふとんまで、あらゆるモノの模型を作っていることがわかる |
「木材のうち、模型で使えるのは目の詰まった、お魚でいえばトロの部分」といい、本物と同じ工法で「建築」する模型もある。縮尺20分の1の五重塔であれば、5万点に及ぶ部品を、材料から加工し、半年かけて組み立てる。「うちは皆趣味がプラモデルという模型好きが多く、ロッカーに家族に内緒で買ったプラモデルを隠している社員がいる」というが、さすがに五重塔は、本物よりは早く建立できるとはいえ、気の遠くなるような作業だろう。「社員旅行に行くと、建物の軒裏を見上げ、写真資料ではわかりづらい部材の収まり具合を確認したり、どの材料で再現しようかといった検討が始まる」という大の模型好きでないと、なかなか続けられない仕事のようだ。