前編に引き続き、中編では8〜4位までお伝えして行こう。
8位 個人情報の管理
個人情報の管理(Personal Information Management)については、どういう製品、どういう技術とはっきりしたことは言えない。何となく直感で感じているいくつかの潮流をひとつのトレンドとしてまとめて紹介させてもらいたい。
ネット上の個人情報
まず最初は、ネット上の個人情報の話。特にひとつのIDでさまざまなサービスにログインできるようになったトレンドと、その信頼の問題についてだ。
ここ数年で急速に採用が広がった「Open ID」のおかげで、IDやパスワードをサービスごとに作らなくても、ひとつのIDでログインできる環境が整いつつある(関連記事)。また、Twitterやfacebookのアカウントでログインさえすれば利用可能なサービスもいくつか登場している。
そうした中には、ワーム/ウィルス的なサービスもある。2009年は、不用意にTwitterやfacebookとの接続をしてしまったがために自分の友達に勝手にメッセージが送られてしまうなど、悪い側面も露呈してきた。こうした問題は、ユーザーの意識のレベルでも、サービスを提供する側の工夫という点でも、2010年中に克服しておかないと今後のソーシャルサービスの発展に悪影響を及ぼすだろう。
リアルな世界での個人情報
2つ目は、リアルな世界での個人情報の問題。日本人は、人に会ったら何は置いてもまずは名刺を差し出すというほどに、名刺交換をビジネスの欠かせない習慣として実践してきた。
実際のところはせっかく名刺を交換しても、そこに書かれた情報をパソコンや電話に打ち込んで、初めて本当にその人とつながることができる。このデジタル全盛時代、そうした情報を交換するのにはもっと効率的な手段があるのだが、伝統的儀式としての名刺交換は、エコ意識が高まる今日でも勢いが衰える気配がない。
しかし、ここにも変化の兆しが訪れているように感じる。
いい変化は、名刺OCRの急速な進化だ。特に名刺を置いておくと自動給紙してスキャン、文字認識をしてくれるシートフィード型スキャナー(ドキュメントスキャナー)の便利さは素晴らしい。
前編でも少し触れた「Evernote」の存在も気になるところだ。iPhoneやAndroid、BlackBerryといったスマートフォンでは、Evernoteを起動し、カメラで名刺を撮影して、サーバーと同期すれば名刺が検索できるようになる。今はまだ日本語認識の精度が低いが、今後、この種のサービスが徐々に実用的になっていくだろう。
一方、悪い変化は最近、急速に増えつつある名刺交換屋だ。昨年から、大型展示会や人が密集するランチ時のビジネス街に、名刺交換屋が出没するようになった。展示会場ではときにはそのブースの人であることを装って「すみません、ちょっといいですか」と声をかけて名刺を交換し、あとから広告などを送り付けるというビジネスだ。
今はまだ注意をしていれば騙されない範囲に留まっているが、名刺はデータロス(登録ミスなどによるコンタクト情報の喪失)も大きければ、紛失も流出もしやすい個人情報伝達手段。今後は昨年、話題を呼んだ「Poken」のようなデジタルな名刺交換技術へのシフトが少しずつ始まる可能性がある(関連記事)。
スマートフォン
3つ目は、ネットとリアルを結ぶもの、つまりiPhoneやAndroidといったスマートフォンのことだ。
今年はこれらスマートフォンの利用が飛躍的に伸びる年になる。個人を特定できる電話番号と紐付けされたスマートフォンなら、簡単にIDの確認ができて、サービス間の連携も簡単になるかもしれない。
そこにiPhoneの「Bump」(関連記事、iTS)のような、リアルで会って相手を認めた上でしか個人情報を交換できないアプリを利用したり、ネット経由で個人情報のアップデートができるようなサービスが出てくれば、次世代の名刺として広まるかもしれない。
いずれにしても、今年はこうした個人情報の取り扱いに関して、何かしらの革新が生まれる年になる気がする。
