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林信行が語る「2008年、知っておくべき10のトレンド」(前編)

2008年12月30日 18時24分更新

文● 林信行

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林信行氏

林信行氏

 2007年、本誌連載「林信行のマイクロトレンド」にて、企業向けのWiki、Twitter/tumblrなどのマイクロブログ(ミニブログ)、OpenID、ソーシャルグラフといったさまざまな新トレンドを早期に取り上げてきたジャーナリストの林信行氏。彼はこの1年間、何を見てきたのか。今年を振り返ってもらい、最も注目する10のトレンドを紹介してもらった。


紹介したいサービスは山ほどあるが……

「Web 2.0」などの華やかなキーワードが並んだ一時期と比べて、今年のIT業界は静かだった。しかし、その中にも、いいサービス、面白いサービスはたくさん生まれてきている。

リグレト

リグレト

 個人的なお気に入りをひとつあげるとすれば「リグレト」だろう。「みんなでヘコむを楽しむサービス」とあるが、何か落ち込むこと、ヘコむことがあった時にパソコンやケータイからアクセスして、その胸の内を書き込めるサービスだ。

 不況に入り殺伐とした空気が漂う世の中だが、人は誰か落ち込んでいる人、ヘコんでいる人をみかけると、自分の状況を差し置いて、なんだかやさしい気分になれるもの。ITと人のココロをうまくつなぎあわせた素晴らしいサービスだと思う。

 もっとも、こうしたおもしろいサービスをひとつひとつ取り上げていたらキリがないので、以下ではいくつか大きなくくりでまとめる形で2008年のトレンドを振り返ってみたい。


10位:携帯電話メーカーの復権

 これはiPhone効果のひとつだと思っているが、ここへきて携帯電話メーカーが威厳を取り戻し始めた

 最近、シャープが「元気なケータイ」と呼ばれるCMを流している。動物がシャープのケータイを使っている様子を映し出すCMだが、実は「元気なケータイ、シャープ」という歌は同じでNTTドコモ版au版、そしてソフトバンク版の3種類を展開している(シャープのCMライブラリー)。ソフトバンク版は、iPhoneを使う白戸家のお父さんを意識してか、猫がiPhone似のケータイで写真のページをめくっている。

 元気なシャープのケータイを選んでもらって、後は友達や家族にあわせて好きなケータイ事業者を選んでもらえばいい、という発想だ(もっとも、シャープ製の端末は、ケータイ事業者によって味付けが違うので、なかなかそういかないが)。

シャープのCM

「元気なケータイ、シャープ」と歌われるシャープのCM

Touch Diamond

Touch Diamond

 もっと凄いのはHTCだ。同社はマイクロソフトと組んで盛んに「Touch Diamond」シリーズの宣伝をしていて、ケータイ事業者はNTTドコモでも、ソフトバンクでも、イーモバイルでも選べるとうたっている(関連記事)。

 iPhone発売前と言えば、多くの携帯電話メーカーが「メーカーはケータイ事業者に言われるままのケータイをつるくことしかできない」と泣き言を言っていた。端末はまずキャリアありきで、メーカーは、そこにSHだの、Nだの省略形でひっそりと存在感を見せるだけだった。

 しかし、力のあるメーカーは前面に立って「キャリア選びは二の次」だと言い始めた。これは非常に健全なことだと思う。

 本来、「ものづくり」をするメーカーは、第1に顧客のことを考えて商品を作らなければならないのに、これまではその関係が歪められていた。アップルがiPhoneでキャリアを無視して、とにかく顧客が欲しがるケータイを出したところ、逆に世界中のケータイ事業者がこれを欲しがって、アップルに交渉してきた。これを見て「あ、こっちが正しいんだ」と気づいたメーカーも多かったのだろう。

 もっとも、この路線に立ったからには、全力で勝負をしなければならない。日本では20%近いシェアを持つシャープだが、世界シェアは2%足らず。iPhoneが海外ケータイアレルギーを取り払ってくれたおかげで、これからはシャープの何倍もの規模でケータイビジネスをしている海外メーカーが次々と押し寄せてくる可能性もある。

 日本メーカーには、ぜひここで頑張って、日本市場はもちろんだが、iPhone 3Gと共に3G通信が広がる、海外市場にも再進出を仕掛けて欲しい。

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