Intelチップセットの歴史 その5
DDR3に先鞭をつけたIntel 3~4世代のチップセット
2009年12月14日 12時00分更新
PCI Express Gen2対応と内蔵GPUのHD対応が
主軸となったIntel 4シリーズ
3xシリーズに続いて、2008年6月に投入されたのが現在主流の世代である「Intel P45」チップセットである。P45のP35に対する大きな変更点は、MCHが内蔵するPCI ExpressコントローラーがGen2対応になったことと、「ICH10」に対応したことである。もっともICH9とICH10の違いは、事実上USBポートがさらに2個増えた程度でしかなく、大きな違いはPCI Express周りの変更にある。
P45は「普及帯のハイエンド」という扱いであり、PCI Express Gen2 x16レーンを2本のx8レーンに分割することで、デュアルGPU構成が可能になった。もっともデュアルGPUと言っても、NVIDIAが自社のデュアルGPU技術「NVIDIA SLI」のライセンス供与を拒んだため、事実上使えるのはATI系の「CrossFire」のみとなっていた。当時すでにATIがAMDに買収されていることを考えると、結果的にライバルを利する事につながったわけで、皮肉としか言いようがない。
P45の場合、むしろそれ以外の変更がなかったことの方が、大きなインパクトとも言えた。それはメモリーである。例えばDDR2世代の場合、Intel 915はDDR/DDR2の両対応だったが、続くIntel 945はDDR2のみの対応とすることで、強引にDDRサポートを打ち切った。ところがP45を始めとするIntel 4シリーズに関しては、ついに最後までDDR2のサポートを切れなかった。最終的にDDR2の切捨てが行なわれるのは次のNehalemの世代。性能的なメリットがほとんどなく、それでいて高価なDDR3への完全移行は、やはり難しかったということだろう。
P45からデュアルGPUのサポートを削った“やや”廉価版が「Intel P43」であり、これに内蔵GPU「GMA X4500HD」を搭載したのが「Intel G45」、「GMA X4500」を搭載したのが「Intel G43」である。
GMA X4500はGMA X3500の後継で、やはりDirectX 10のShader Model 4.0対応のプログラマブルシェーダーを搭載し、動作周波数を800MHzまで引き上げた構造になっている。このGMA X4500に、Blu-rayなどのHD映像のデコード機能を追加したのがGMA X4500HD、という位置づけだ。
G43をベースに、ビジネス向けの変更(対応ICHをICH10DOに変更)したのが「Intel Q45」で、ICHをやや廉価版の「ICH10D」に変更したのが「Intel Q43」である。インテルの製品リストページには掲載されていないが(データシートには記載)、Q43のいくつかの機能をオプション扱いとしてさらに価格を下げた、OEM向け専用の「Intel B43」という製品もある。
さらに、G43をベースに接続するICHを「ICH7」として、PCI Express Gen2 x16のサポートを削り、さらにメモリーも2チャンネル/2バンクとすることで低価格化したのが「Intel G41」となっている。「今更945世代のICH7か?」という気もしなくはないが、ICH7もICH10も同じDMIで(G)MCHと接続されているし、大きな違いはUSBポートの数の差程度のものだ。
むしろICH7ならUltra ATAポートがひとつ残されている分、Ultra ATA用にJMicron社製コントローラーチップをマザーボードに搭載しなくても済むわけで、その分低コストになるといったメリットもある。そのため、低価格製品向けに好まれたことと、P31/G31のお陰で、ICH7がいまだに販売されていたことなどが、ICH7採用の主な理由だったと想像される。
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