リモートレプリケーションの静止点・整合性
ストレージのレプリケーションを適用する上でも、前回に触れた「静止点」と「整合性」について考慮が必要である。それでは、ストレージのリモートレプリケーションの場合「静止点」はどのように考えるのだろうか?
同期・非同期にかかわらず、ストレージはターゲットボリュームに対して連続的にデータをレプリケーションしている。したがって、アプリケーションとしての静止点は設けず、サーバが停止した瞬間の状態を再現するデータ整合性(クラッシコンシステンシー)のみ実現している。同期モードの場合はクラッシュコンシステンシーをつねに自動的に維持しているが、非同期モードの場合何らかの工夫が必要だ。これは、ターゲットボリュームが中途半端に更新され、アプリケーションから利用できない状態を防ぐためである。
非同期モードにおいてクラッシュコンシステンシーを維持する仕組みとして、書き込み順保証とスナップショットデータの伝送・適用の二種類がある。図3の書き込み順を保証する方式は、ローカルサイト側ですべてのWrite I/Oに対してタイムスタンプを付与し、リモートサイト側でそのタイムスタンプを元に順番にデータを適用する。
それに対して、図4のスナップショット方式はローカルサイト側であるサイクルでスナップショットを作成し、そのサイクル間に発生した更新データをまとめて(順不動で)転送する。リモートサイト側ではそのサイクルの更新データすべてを受け取った時点で、初めてターゲットボリュームに適用する。データベースなどのアプリケーションは、更新ログなど同一の領域に対して短時間に連続的に更新をかける。
この場合、後者のスナップショット方式はサイクルの間の最後の更新データのみ転送することになり、回線を流れるトラフィックを削減する効果がある。そのため、最近のストレージ非同期レプリケーション機能は後者の方式を採用している。たとえば、EMCのハイエンドストレージであるSymmetrixのSRDF/AやミッドレンジストレージであるCLARiXのMirrorView/Aは、スナップショット方式となっている。
リモートレプリケーションとバックアップ
続いて、リモートレプリケーションを行ないながら、同時にアプリケーションの静止点を持ったバックアップデータを保持する仕組みを見てみよう(図5)。このように、リモートサイトのストレージで筐体内レプリケーション機能を併用し、ローカルサイトから同期・切り離し操作をアプリケーションと連携して行なうことにより、つねにアプリケーション整合性のあるデータがリモートサイトに保持できる。
リモートレプリケーション構成では、ユーザーのオペレーションミスやソフトウェアバグによる論理障害はすぐさま伝搬してしまう。図5でいえば、ソース側のオペレーションミスで重要なファイルを削除してしまった場合、リモートのターゲット内のファイルも削除されてしまうわけだ。このため、リモートサイトのストレージでローカルレプリケーション併用するバックアップは、論理障害の備えとしても有効だ。
(次ページ、「最新のレプリケーション技術」に続く)
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