付加機能を大幅強化したChrome 400
ただしその一方で、付加機能の強化ぶりは著しい。まず動画再生支援は、Blu-layの1080p HD映像を2ストリーム同時再生できる「Chromotion 2.0+」(Chromotion HDとも呼ばれていた)に進化。HDCPへの対応はChrome 25/27から行なわれていたが、これに加えてHDMIやDisplay Portのサポートも追加された。省電力機構も、さらに進化した「PowerWise Technology」が搭載されている。
製造プロセスには富士通の65nmプロセスを採用しているが、これはVIA(というかCentaur)のC3/C7のプロセスが、やはり富士通の90nm/65nmを採用していることと無縁ではないだろう。以前のVIAは台湾TSMC社を多用していたが、チップセットなどはともかく、CPUやGPUといった製品では先端プロセスの方がダイサイズや消費電力などの点で有利であり、そうなるとCPUで実績を積んでいる富士通のプロセスをそのまま使うのが順当だった、ということであろう。
またChrome 400は当初、OpenGL 2.1のみのサポートだったが、後からOpenGL 3.0のサポートが追加されている。ことパソコン向けで考えた場合、DirectXに対応していればOpenGLは必須ではない。だが組み込み用途向けを考えると、DirectXが使えない(Linux系の場合も多いし、Windows CE系の場合もある)ケースは少なくないから、こうした用途にOpenGL系のサポートを強化するのは悪い話ではない。
このChrome 400に加え、2008年11月には「Chrome 500」シリーズがラインナップされる。もっとも基本的な構造は同じで、若干の動作周波数向上と、最大メモリー搭載量の増加が主要な相違点だ。OpenGL 3.0を最初からサポートした点も異なるが、これに関してはChrome 400シリーズも後追いでサポートしたので、さして差はなくなっている。
主な市場は組み込み向けに
DirectX 11対応は2011年にずれこむか?
これに続く製品に関してS3 Graphicsは、現時点では公式には何も発表していない。一応DirectX 10.1に対応している時点で、Windows 7環境でも問題なく動作するし、DirectX 11との互換性を保つためのオーバーヘッド(ソフトウェアエミュレーション)にしても、現在のChrome 400/500程度なら大きなものではない。
なにより、現在のVIA Technologies(とS3 Graphics)が、パソコン向けGPUは省スペースノートや省スペースデスクトップなどのみをターゲットとしており、彼らの主戦場が組み込み向けに移っている状況では、DirectX 11に「急いで」対応する必要性はないだろう。
もちろん、長期的にはWindows EmbeddedもWindows 7をベースとしたものに変わるし、またGPGPU的な使い方もパソコンのみならず組み込み機器にも広まると見られるので、いずれは対応の必要があるとは思われる。おそらく2010年中にサンプルが出ればいい方で、実際には2011年以降にずれ込むだろう、というのが筆者の予測である。
今回のまとめ
・新生S3 Graphics最初の仕事は、既存のGPUをVIAのチップセットに統合する作業から始まった。SavageシリーズのGPUは、KL133/KM133/PM133に形を変えて取り込まれる。
・S3 Graphics初の独立GPU「DeltaChrome」は2003年3月に登場する。DirectX 9対応でMPEG-2/4再生支援機能も備えていたが、ベンダーの関心を得られず、採用事例はわずかに止まる。
・続く「GammaChrome」でも性能面で厳しく、グラフィックスカード市場には食い込めない。改良版「Chrome」ではノート向けにシフトを強める。
・2008年3月の「Chrome 400」シリーズ、同年11月の「Chrome 500」シリーズでDirectX 10.1対応を実現。しかし今ではパソコンより組み込み向けが主流で、今後の新製品は2011年にずれ込みそう。
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