ベンダー独自の冗長化機能
STPやリンクアグリゲーション、VRRPなどの冗長化技術は、規格として標準化されているため、多くのベンダーの製品で実装されている。そのため、異なるベンダー製品とも相互利用できる可能性が高い。その一方で、標準規格の弱点を補うため、ベンダーが独自の冗長化技術を製品に投入することもある。
レイヤ3のVRRPと似たような動作※4を行なうベンダー独自のプロトコルも数多く用意されている。シスコシステムズの「HSRP(Hot Standby Router Protocol)」やエクストリームネットワークスの「ESRP(Extreme Standby Router Protocol)」などが挙げられる。
※4:似たような動作 ベンダー独自のプロトコルを利用した場合、たとえば障害時での切り替え速度が速かったり(HSRP)、L3だけでなく、L2の冗長化機能を持っている(ESRP)。
最近、流行している冗長化技術が、複数のスイッチを専用ケーブルで相互接続して、1台のスイッチに見せかけるL3スイッチのスタッキングだ(図4)。
スタッキング自体はハブのポート増設の目的で古くから提供されてきたが、L3スイッチのスタッキングは、ルーティングテーブルやFDB、ARPテーブルなどの各種データベースを矛盾なく同期させる必要があるため、実装が難しかった。しかし、現在ではノーテルのSMLT(Split MultiLink Trunking)やH3Cテクノロジーの「IRF (Intelligent Resilient Framework)」、アライドテレシスの「VCS(Virtual Chassis Stacking)」など、企業向け製品を出しているほとんどのベンダーが、こうしたL3スイッチのスタッキングに対応した機種を展開している。
L3スイッチのスタッキングは、おもに下位に配置されたフロアスイッチの集線に用いられる。フロアスイッチから、リンクアグリゲーションを用いて、スタックされた異なるスイッチにそれぞれリンクを張ることで、冗長性を確保するほか、負荷分散も実現できる。スタックされたスイッチは複数台が併用するので、VRRPのように障害時までスタンバイ機が眠っていることもない。また、障害時の切り替わり時間も、STPやダイナミックルーティングに比べて大幅に短縮されている。
従来、シャーシ型製品でのみサポートされているこうした冗長機能だが、昨今はボックス型のスイッチでも利用可能になっている。ただし、スタック可能なスイッチの数が各社で異なるため、製品選びには注意したい。
(次ページ、「通信品質を保つQoSの役割」に続く)
この連載の記事
-
最終回
ネットワーク
アクセスルータの機能を知っていますか? -
第3回
ネットワーク
ルーティングとレイヤ3スイッチの関係とは -
第2回
ネットワーク
高価な企業向けスイッチはここがすごい! -
第1回
ネットワーク
ネットワーク機器の代表「スイッチ」の役割とは? -
ネットワーク
図で解剖!スイッチ&ルータ - この連載の一覧へ