QoSを実現するためのL3スイッチの内部処理
L3スイッチは、プロトコルで指示された優先度に基づき、パケットの送受信を制御する(図6)。
まずはEthernetやIPのアドレスやポートなどのヘッダ情報、スイッチの受信したインターフェイス番号などの条件が一致する一連のトラフィック(=フロー)を検出する。次にあらかじめ投入されたポリシーに基づき、個々のフレームに対するスイッチ内部の優先度を設定する。また、必要であればCoS値やToS値などの書き換えも行なう(マーキング)。次に、設定された内部優先度に従って、送信待ちのフレームを一時的に蓄積するキュー※6を選択する(キューイング)。あとは、設定された内部優先度に応じて、フレームをキューに蓄積するか、廃棄するかを制御する。最終的には、キューに蓄積されたフレームの出力順序や帯域などを制御しつつ、送信される。
※6:キュー(Queue) 元来は「順番待ちをする人の列」で、入れた順に出てくる一時的な保管場所を意味する。IT業界では、FIFO(First In First Out、先入れ先出し)方式で処理されるバッファ領域を指す。
実際にQoSを運用する際には、設定された優先度を完全に信用して優先制御を行なうこともあれば、スイッチ内部のルール(ポリシー)に沿って優先度を変更することもある。大きな組織では、拠点ごとに優先制御のポリシーが異なることがあり、受信したフレームの優先度をそのまま採用できない、というケースがあるからだ。そのような場合、管理者はポリシーをあらかじめスイッチに手動で設定しておく。
また、ポリシー設定に際しては、スイッチの性能(機能)に注意を払う必要がある。QoSのプロトコルでは、8段階(IEEE802.Q/p・ToS)または64段階(DiffServ)の優先度を設定できるが、すべてのスイッチで8段階や64段階の制御が可能なわけではない。廉価なスイッチでは「QoS対応」を謳いながら内部処理が3段階にしか分割できず、「IP電話を最優先・TV会議を二番目・それ以外はすべて最低クラス」といった設定しかできないものがある。逆に、高価な製品では最低保証帯域か最大利用可能帯域まで細かく制御できるものもある。つまり、製品によって内部処理のきめ細かさが異なる。
IPアドレスを割り当てるDHCPサーバ
大規模な企業ではネットワーク管理者の手間を軽減するため、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol、動的自動構成プロトコル)を用いて、IPアドレスやサブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバなどのPCやプリンタのネットワーク設定を自動化している(図7)。
DHCPはクライアント/サーバ型のプロトコルで、PCやプリンタがDHCPクライアントになり、そのクライアントに構成情報を指示するのがDHCPサーバだ。現在、レイヤ3スイッチやルータのほとんどがDHCPサーバ機能を持っている。
ただ、ハードディスクを持たないレイヤ3スイッチでは、登録可能なIPアドレス数が少なく、DHCPサーバとしては貧弱な機能しか持たない製品が多い。そのため、クライアントが数千台あるような大規模ネットワークでは、アプライアンス※7のDHCPサーバや、UNIXやWindows ServerといったサーバOSを使ったDHCPサーバ機能を利用すべきだ。
※7:アプライアンス 特定の機能に特化したコンピュータを指し、ファイルサーバやDHCPサーバ、DNSサーバ、メールサーバ、IP電話サーバなどが市販されている。
(次ページ、「DHCPとDNSのリレー機能」に続く)
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