65nmのマイナーチェンジ版「G92」が
GeForce 8800 GTで登場
実はG8x系列の製品はこれで終わりである。だが、GeForce 8シリーズはまだ終わらない。NVIDIAはこれらに続き、G80コアの構造を基本的には引き継ぎつつ、65nmプロセスを使う「G92」コアを開発した。話が厄介なのは、このG92コアの基本となる製品「GeForce 8800 GTS」は2007年12月にリリースされるのだが、その2ヵ月前にパイプラインを一部無効化した「GeForce 8800 GT」がリリースされたことだ。
G92とG8xコアの機能的な相違点としては以下のようになる。
- PCI Express Gen2をサポート
- 3-way SLIをサポート
大雑把に言えば違いはこれだけで、依然としてDirectX 10のみのサポートに止まる(10.1は未サポート)など、ユーザーから見れば「消費電力が減り、より高クロックで動作するG8x」という程度の差しかない。厳密に言えば、G80のみ動画再生用のビデオプロセッサーが第一世代の「VP1」なのに対して、それ以降には第2世代の「VP2」が搭載されている。その関係でH.264のサポートの有無が異なっているが、これはあくまで“G80とそのほか”という話だ。
むしろ目立つ違いはメモリーバスで、G8x世代の384bitや320bitがなくなり、256bitで統一された点だろうか。この世代ではGDDR3メモリーの性能が上がり、より高速に動作するGDDR3も投入されたが、それでもバス幅の削減はかなり大きな影響があり、結果としてG8x世代よりも性能が落ちた製品も散見される(アプリケーションによる差もあるので、「どのアプリケーションでも一律に落ちた」というケースは珍しいが)。
さてこのGeForce 8800 GTに続き、G92コアをフルスペックで駆動したGeForce 8800 GTSが2007年12月にリリースされる。製品名がG80と同じ“GeForce 8800”というあたりが、非常に混乱を招く物となっている。またメインストリームのややローレンジ向けには、GeForce 8800 GTからシェーダーをいくつか無効化したものが、同じ「GeForce 8800 GS」という型番で投入されることになる。
コアは変わらぬまま、製品名はGeForce 9に
GeForce 8シリーズの型番はこれで終了し、ここからはGeForce 9系列となる。まずハイエンドでは、GeForce 8800 GTSの動作周波数をややあげた「GeForce 9800 GTX」が2008年3月に投入された。同時に、G92を搭載するカード2枚を1台にまとめて、GPU間をPCI Expressスイッチでつなぎ、1台でSLI動作が可能というお化け製品「GeForce 9800 GX2」も登場する。
もっともこれは、SLIに未対応なアプリケーションでは全然高速化されず、またSLIに対応していてもかなりの高解像度で、かつさまざまなエフェクトを有効にしないと性能向上を実感するのは難しかった。それでいて消費電力はほぼ200Wという代物だったために、これに続く製品は今のところ存在していない。当初の予定では、後述する「G92b」コアを2つ搭載した「GeForce 9800 GX2+」という製品が予定されていたようだが、こちらは途中でキャンセルになったもようだ。
2008年7月に、G9xコアは新プロセスに移行する。このコアはG92bと呼ばれるが、機能的にはまったくG92と同じ。プロセスを微細化したことで消費電力が下がったり、動作周波数が上がったりしたことが違いとなる。こうした理由もあって、この時期から同じ商品名、同じスペックながら、複数のコアが入り乱れることになった。
2008年7月にリリースされた「GeForce 9800 GTX+」は、それでも商品名の最後に“+”をつけることで差別化がなされたが、同時にリリースされたG92bベースの「GeForce 9800 GT」はG92コアのものとまったく同一スペックであり、唯一消費電力のみが異なっていた。また図では省いたが、G92コアのGeForce 8800 GTは、その後GeForce 9800 GTに商品名が変更されて販売されている。
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