デザイン面も磨きをかけた「MN128-SOHO SL11」
MN128-SOHOの登場後、NECやヤマハなども同様の製品を出し、ISDNルータの市場が確立した。そして、NTT-MEは、その後もMN128-SOHOのラインナップを拡充し続けた。
たとえば、1998年に登場したMN128-SOHO SL10では液晶ディスプレイを搭載し、配線や通信状態などをPCなしでも確認できるようになっていた。もとより、ISDNにはDSUと局間の配線で極性が反転していると通信できないという弱点があった。これをLEDではなく、ディスプレイに表示することで、トラブルをわかりやすくしたという。
また、配線ミスを避けるため、ポートとケーブルの色分けもこの時期に行なった。「電話口からTAに入る線も、電話やFAXをつなぐ線もRJ-11ですし、S/T 点端子とLANポートがRJ-45のコネクタです。どのポートにどのケーブルを挿せばいいのかわからないという問い合わせはけっこう来ていました」(菊地氏)といったサポートの意見も取り入れたものだ。
そして、1999 年に出した「MN128-SOHO SL11」では、初めて外部のデザイナーを起用し、薄いピンク・左右で非対象なユニークな筐体を採用した。
MN128-SOHOは黒と青筐体の初代機のインパクトが強いが、もっとも売れたのは、実はこのMN128-SOHO SL11だという。
しかし、2000年以降日本ではADSLの導入が進み、ISDNの加入者は徐々に落ちてきた。こうしたなか、MN128シリーズもブロードバンドルータとして展開し、ADSLモデムを内蔵したモデルも出した。しかし、ADSLではISPからのモデムレンタルが主流になり、昨今では量販店でルータを購入すること自体も少なくなった状況だ。
今から10年前、同じ通信の世界でありながら、回線交換の電話とパケット交換のデータ通信はあきらかに異なったサービスであった。この両者をよいところを違和感なく融合させ、新しい通信の可能性をかいま見せてくれたのが、MN128-SOHOだったと思う。
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