富士通は4月30日、HDD事業の売却に関する最終契約書を東芝および昭和電工と締結したと発表した。これにより、富士通のHDD事業は約300億円で東芝に譲渡され、HDD内部の記憶媒体(メディア)事業は昭和電工に譲渡されることが決定となった。各社はそれぞれ2月17日に譲渡に関する基本合意を終えており、7月1日を目標に事業譲渡の完了を目指す。
東芝は、富士通本体が持つHDD事業を新設の「東芝ストレージデバイス株式会社(TSDC)」に継承。フィリピンにある企業向けHDDの製造拠点とタイの2.5インチHDDの製造拠点、山形富士通のHDD事業部門(HDDの試作や品質保証などを担当)をTSDCの子会社とする。
東芝はこれまで、音楽プレーヤなどの組み込み用途やノートPC向けの小型HDD事業に特化してきたが、今回の譲渡により1.8インチから3.5インチまで幅広いHDDラインナップを揃えることになる。また、富士通の企業向けHDDの技術とノウハウを活用することで、サーバ向けの高性能SSD事業に参入することも発表されている。
また昭和電工に対しては、サーバ用HDD向けのアルミメディア、モバイルPCや車載用HDD向けのガラスメディアを生産する山形富士通のメディア事業部門を譲渡する。これは、山形富士通のメディア事業部門を6月に分社化した上で、7月に新会社の株式を昭和電工に譲渡する形となる。
昭和電工は、千葉県市原市とシンガポール、台湾にメディア生産ラインを持っており、月産1070万台の生産能力を有している。今回の譲渡で昭和電工は、サーバ用アルミメディアの開発および生産体制を強化し、山形富士通のメディアを使用している顧客に対し、今後も昭和電工が安定的に供給する体制を構築する。