かねてより話題となっていたAOpenのPentium Mマザーボード「i855GMEm-LFS」がついに発売された。一般ユーザーでも不安なく使える初のPentium Mマザーとして、非常に大きな意義がある1枚だ。
「i855GMEm-LFS」の市販パッケージと、マザーボード本体を除いた付属品を並べてみた。ヒートシンク、ケーブル類、大判のイージーインストールガイド、日本語マニュアルなどが付属する。 |
完璧な充実度を誇るAOpen渾身の1枚
Dothanの性能と消費電力 インテル「Pentium M搭載静音PCの真の実力」(写真をクリックすると当該記事に移動します) | これがPentium Mの真の実力だ! Intel「P4もかすむPentium M自作の魅力」 |
いよいよPentium Mの時代がやってきそうだ。その時代の幕を開けるのは、もちろんAOpenから発売された本製品「i855GMEm-LFS」である。
Pentium Mは、きわめて高度に「省電力」と「高性能」という相反する要素のバランスをとったCPUとして、半年ほど前から注目されてきたが、本来モバイル向けの製品ということもあって、一般ユーザーにはPentium Mを使いたくとも使える環境が整っていなかった。リテールパッケージ製品として流通してはいたものの、マザーボードは産業用に設計された少々癖のある製品が少量流通している程度。それらはフォームファクタが汎用規格から外れていたり、オンボードデバイスの内容がコンシューマ向けのトレンドから外れていたり、さらに価格も5万円以上と、一般ユーザーが利用するには敷居が高すぎたのである。
本製品はそんな閉塞的な状況を一気に打破する製品だ。汎用的なMicroATXフォームファクタに対応しつつ、Pentium 4用マザーボードと同じように、シリアルATAII機能対応RAIDや2系統のギガビットLAN、5.1チャンネルサウンドといった最近流行のオンボードデバイスをもれなく搭載する、実績のあるマザーボードメーカーの製品。これだけでも大きな価値があるのだが、本製品がもっとも優れている点は、そういったハードウェアの仕様だけではない。ソフトや付属品などを含めたパッケージングの優秀さにある。
Pentium Mを利用する上でマザーボードとともに障害となってきたのがCPUクーラーだ。リテール販売のパッケージには同梱されず、また、Pentium 4用のものは微妙に高さが合わない。市場にも少量出回っているが、入手性の悪さは否めない。本製品は、オリジナルのCPUクーラーを同梱することでその問題を解決しているが、これのデキがまた秀逸だ。Pentium Mに特化した静音設計で、ファンの回転速度は最大2200rpm(平均2000rpm)。ヒートシンクとファンを含めた高さも約35mmと、小さなケースに入れたときでも物理的な干渉の心配がない小型タイプとなっている。Pentium 4のように高い冷却性能が要求されるわけではないPentium Mに特化した専用品ならではの使い勝手の良さを誇る。
それを強力にサポートするのが、独自の静音ユーティリティ「SilentTek」。CPUファンを含めて2ヵ所のファン回転速度をコントロールできるだけでなく、オーバークロック機能や、拡張版SpeedStep(Pentium Mがもつ省電力機能)のコントロール機能も持っており、静音/性能を自由に操れる。
付属するケーブル類も気が利いている。シリアルATAケーブルとシリアルATA電源ケーブルのほか、フロッピーと80芯IDEケーブルは細かく束ねてスマート化したものが付属する。小さなケース内でも通気性や作業性をそこなわないようにとの配慮が見て取れる。また、セットアップ手順を分かりやすく解説した大判カラーのイージーインストールガイドや、機能を詳しく解説した日本語マニュアルが付属するので、自作をしたことがない方でも使いやすいようになっている。
実売価格は2万9800円と、これまでの産業用製品と比べて1万5000~2万円ほど安価。通常のPentium 4用マザーボードよりも若干割高だが、充実したパッケージングの内容を考慮すれば決して高くはないだろう。
「i855GMEm-LFS」 | 「i855GMEm-LFS」の詳細解説 |
(1)「mPGA479Mソケット」 | (3)「ノースブリッジ(Intel 855GME)」 |
- mPGA479Mソケット
Pentium M/Celeron M用のCPUソケット。レバーは用意されておらず、マイナスドライバでソケット上部のネジを緩めてからCPUを装着し、再び締めて固定する。 - CPUファンコネクタ
CPUファン接続用の3ピン「CPUFAN」コネクタ。BIOSおよび付属ツールの「SilentTek」でここに接続したファンの回転速度をコントロールできる。 - ノースブリッジ(Intel 855GME)
Intel 855GMEのノースブリッジ。FSB400MHz、DDR333シングルチャネル対応。グラフィックス機能を内蔵している。サウスブリッジとはハブインターフェイス(266MB/秒)で接続されている。 - システムファンコネクタ
ケースファン接続用の3ピン「SYSFAN2」コネクタ。こちらに接続したファンも、BIOSおよび付属ツールの「SilentTek」で回転速度をコントロールできる。 - ギガビットLANコントローラ
MarvelのギガビットLANコントローラ「88E8001」を2基オンボード搭載している。PCI接続だが、拡張スロットが少ないだけに標準で2系統のLANが使えるのはうれしい。 - AC'97コーデック
オンボードサウンド機能を提供するRealtekの5.1チャンネル出力対応AC'97コーデック「ALC655」。S/PDIF出力にも対応するが、ブラケットは別売り。 - PCIスロット
MicroATXフォームファクタのため、拡張スロットの本数は4本が上限。ビデオカード装着用のAGP 4Xスロット以外の3本は、すべてPCIスロットとなっている。 - AGPスロット
ノースブリッジにグラフィックス機能を内蔵するが、外部AGPカードの装着も可能。AGP 4Xまでの対応で、AGP 4Xでの動作を想定していないごく一部のAGP 8X対応カードは利用できない。 - シリアルATAII対応コントローラ
PromiseのシリアルATAコントローラ「PDC20579」を搭載。ネイティブコマンドキューイングなどシリアルATAIIフィーチャーの一部に対応。RAID 0/1をサポート。 - DDR DIMM用メモリソケット
DDR333/DDR266/DDR200(PC2700/PC2100/PC1600 DIMM)に対応した184ピンのメモリソケット。シングルチャンネルなので2本1組で利用する必要はない。 - サウスブリッジ(ICH4-M)
ICH4に省電力モードのサポートを加えたICH4-Mを搭載している。USB 2.0は6ポートをサポート。ICH4-M自体はシリアルATAインターフェイスはサポートしていない。 - IEEE 1394コントローラ
AgereのIEEE 1394コントローラをオンボード搭載する。ただ、リアパネルI/O部にIEEE 1394コネクタはなく、標準ではコネクタ増設用のブラケットも同梱されない。 - 6層基板
Intel 855GMEチップセットのマザーボードデザインガイドはモバイル向けの8層用しか存在しないが、本製品は、AOpen独自の6層基板設計のPCBを採用。低コスト化に貢献している。
「i855GMEm-LFS」のバックパネル | 「i855GMEm-LFS」のバックパネルの詳細解説 |
- PS/2コネクタ(マウス)
- パラレルポート
- ギガビットLANコネクタ
- ライン入力
- ライン出力
- PS/2コネクタ(キーボード)
- シリアルポート
- アナログRGB出力
- USB 2.0ポート
- マイク
i855GMEm-LFSの主なスペック | |
製品名 | i855GMEm-LFS |
---|---|
対応CPU | Pentium M/Celeron M(mPGA479M) |
チップセット | Intel 855GME/ICH4-M |
メモリソケット | 184ピンDIMM×2 |
対応メモリ | DDR333/266/200シングルチャネル |
拡張スロット | AGP×1、PCI×3 |
FSBクロック | 100~400MHz(1MHz刻み) |
AGPクロック | 66.00/75.43/88.00MHz |
CPUコア電圧 | 0.700~1.340V(0.016V刻み) |
サウンド | 5.1チャンネル出力(Realtek ALC655) |
有線LAN | 10/100/1000BASE-T×2(Marvel 88E8001×2/PCI) |
無線LAN | ―― |
IEEE 1394 | S40/2ポート(Agere FW3226-100) |
SATA RAID | RAID 0/1(Promise PDC20579) |
IDE RAID | ―― |
BIOS保護機能 | DieHard BIOS Lite |
バックパネルI/O | PS/2×2、USB 2.0×4、LAN×2、アナログRGB、パラレル、シリアル、ライン入力、ライン出力、マイク |
ボードサイズ | 244(W)×244(D)mm |
ブラケットI/O | ―― |
主な付属品 | 静音CPUクーラー、シリコングリス、SATAケーブル、SATA電源ケーブル、スマート化フラットケーブル2本、日本語マニュアル、日本語イージーインストールガイド、ドライバ/ユーティリティCD、RAIDドライバFD、I/Oシールドなど |