(株)日立製作所、LG電子(株)、松下電器産業(株)、パイオニア(株)、オランダのロイヤル フィリップス エレクトロニクス社、サムスン電子(株)、シャープ(株)、ソニー(株)、フランスのトムソン マルティメディア社の9社は19日、都内で記者発表会を開催し、デジタルハイビジョン映像を2時間以上記録可能な大容量光ディスクレコーダー規格“Blu-ray Disc(ブルーレイ ディスク)”を策定したと発表した。
“Blu-ray Disc(ブルーレイ ディスク)”ロゴ。“b”がディスク中心部とレーザーがあたっているところを、“D”がディスクの弧を表わしているという |
メディアはCD、DVDと同じサイズだが、取扱いやすさを考慮し、カートリッジに収められている。青紫色レーザー光によって相変化記録を行なう。容量は1層で27GBとなっている。春頃をめどにライセンス提供を開始するとしている。
発表会で挨拶したソニー執行役員 専務の高篠静雄氏は「デジタル放送やブロードバンド環境の普及により、大量のデジタルコンテンツが家庭に流れ込んでくる。このような中で、大容量記録ができ、簡便な操作性、安全確実な保存ができる新規のフォーマットが待たれていた。これに応えるため今回列席の各社とBlu-ray Discを策定した。(今回の発表は)記録型ビデオディスクとしてのものだが、(DVD-Videoのような)ハイビジョン映像ソフト向けや、コンピューター記録用として拡張していきたい。9社が中心となり、今年の春頃から各社に対してライセンスしていきたいと考えている」と述べた。
“Blu-ray Disc”のカートリッジを披露する、ソニー執行役員 専務の高篠静雄氏。右手に持っているのがカートリッジの表側で、左手に持っているのが裏側となる |
技術面について説明した松下電器産業代表取締役専務の三木弼一氏は、20年前にCDが発表されて以来記録型DVDまで光ディスクの発展を紹介し、Blu-ray Discについて「(直径)12cmのものとしてはこれが最後の規格ではないかと思う。今後新しい規格が出てくるとしても、記録メディアは違った形になると考えている。そういう意味でファイナルとなる光ディスク規格が統一されることは非常に意味のあることだ」と述べて、有力メーカー間のコンセンサスが得られたことをアピールした。
三木氏は、Blu-ray Disc規格のポイントして3つ挙げた。
1つめは、デジタルハイビジョン放送が2時間以上(通常のテレビ放送なら13時間以上)記録できること。現在は1層だが、今後2層にして4時間以上、データ量として50GB以上のものを開発するとしている。2つめは現行のデジタル放送と親和性が高いこと。デジタルハイビジョン放送では、ビットレートが24Mbpsだが、それを上回る36Mbpsとしたという。また、映像記録方式として国際標準である“MPEG-2トランスポートストリーム記録”を採用したことで、デジタルハイビジョン放送を圧縮なしで記録でき、映像とともに流されるほかのデータも同時に記録できるとしている。なお、コンテンツの不正利用などの対策として、ディスクの1枚1枚にユニークなIDを付加しているという。3つめは規格をファミリー化して世界に広げるということ。今回の規格は録再可能なものだが、CD-Rのような追記型メディアや、DVD-ROMのような再生専用型メディアにも展開するという。また、コンピューターストレージとしての利用も検討しているという。
Blu-ray Disc規格の主な仕様は以下の通り。
- 記録容量
- 23.3/25/27GB(いずれも1層)(参考値:DVDは4.7GB)
- レーザー波長
- 405nmの青紫色レーザー(参考値:DVDは650nm)
- レンズ開口数(NA)
- 0.85(参考値:DVDは0.6)
- データ転送レート
- 36Mbps(参考値:デジタルハイビジョンは24Mbps)
- ディスク直径
- 120mm
- ディスク厚み
- 1.2mm(光透過保護層は0.1mm)(参考値:DVDの光透過保護層は0.6mm)
- 記録方式
- 相変化記録
- トラック方式
- グルーブ記録
- トラックピッチ
- 0.32μm(参考値:DVDは0.72μm)
- 最短ピット長(マーク長)
- 0.16/0.149/0.138μm(参考値:DVDは0.4μm)
- 記録面密度
- 16.8/18.0/19.5Gbit/inch2
- 映像記録方式
- MPEG-2
- 音声記録方式
- AC3、MPEG-1 Layer2、ほか
- 映像音声多重化方式
- MPEG-2トランスポートストリーム
- カートリッジ寸法
- 約129×131×7mm
三木氏はDVDとBlu-ray Discとを比較しながら大容量化技術などについて説明した。トラックピッチはDVDの約2分の1と狭くし、最小ピット長もDVDの35%(0.14μm)に縮め、全体で約5倍の記録容量とした。レーザー波長も650nmから405nmにしたほか、レンズの開口数(※1)を0.6から0.85に上げ、焦点での光スポット面積をDVDの19%に狭めた。また、記録保護層が0.6mmから0.1mmに大幅に薄くなったことについては、ディスク傾きに対するマージンを確保するためとしている。
※1 開口数(NA、Numerical Aperture):焦点側からレンズを見たときの角度。Blu-ray Discの記録フォーマットの構造 |
レンズピックアップ部分のDVDとBlu-ray Discとの比較 |
保護層が薄いのはディスク面の傾きに対するマージンのためという |
Blu-ray Discの将来展望についてコメントした、パイオニア技術戦略最高顧問の杉本昌穂氏は「ハイビジョン受像器がメーカーの期待ほどに普及しなかったのは、ハイビジョンを記録するレコーダーが家庭に十分に普及していないためだ。そういう意味でBlu-ray Discは今後のエレクトロニクス産業の発展にって大いに意味がある。日本市場では昨年年11、12月にデジタルハイビジョン受像器の需要が増してきたが、今年はソルトレークオリンピック、ワールドカップサッカーと大きなスポーツイベントがあり、2002年末には500万世帯、2003年末には800万世帯に普及することが確実と見ている。Blu-ray Disc規格によって、日本の家庭に経済的なハイビジョン録画機を普及させるとともに、ハイビジョン受像器の普及をもうながすものと考えている」と述べた。
Blu-ray Disc規格は、まずハイビジョンのディスクレコーダーとして、ついでハイビジョン映像メディアやコンピューターストレージとしての展開を予定するという |
また、市場への展開については「まずは(BSデジタルハイビジョン放送が始まっている)日本市場、その後地上波デジタル放送が始まっている韓国、米国、何倍が市場として期待できる」という。そして、日欧韓の9社による規格策定となったことについては「日本、韓国、ヨーロッパというグローバルチームによって、新しい放送文化を築いていくことはすばらしい仕事であると考えている」と述べた。
今回の9社にDVD規格策定では中心メンバーの1社であった(株)東芝がメンバーに入っていないことについて質問も出たが「東芝に聞いてほしい」とのことだった。また今回のBlu-ray Disc規格は「バージョン0.9」(パイオニア杉本氏)であり、放送局などのコンテンツホルダーと話し合ったのちにバージョン1としたいという考えを明らかにした。
気になるBlu-ray Disc規格製品の商品化次期だが、バージョン0.9ということもあってか、各社とも「未定」または「ノーコメント」とのことだった。なお、今回のBlu-ray Disc規格はDVD関連規格の標準化団体である“DVDフォーラム”における標準化とは別に、9社で策定したものであるとしている。DVDフォーラムではすでに“DVR-Blue”など次世代の規格が話し合われており、規格名にDVDを思わせるものがないのもこうした経緯からの配慮と思われる。ただし、Blu-ray DiscレコーダーでもDVDを再生できるようにしたいとしており、なんらかの働きかけが行なわれると見られる。