軽快な反応と画質には満足
撮影サンプル1。F8.0、1/800秒(オートモードなのでExifデータの数値)。元画像は1216×912ドットだが、640×480ドットにリサイズして掲載している。逆光での撮影のため、ビルのディティールがつぶれ気味だが、青空の色あいや雲はきれいに表現されている。 |
実際に利用してみると、なによりキビキビと動く軽快な操作性は気持ちいい。レンズの沈胴やフォーカス動作もないため、電源ONからファーストショットまでは約3秒であり、最高画素数(1216×912ドット)であっても約2秒間隔で撮影できる(連写モードはないので、タイミングよくシャッターを押した場合)。
画質に関しては、風景を撮った時に“ビシッとピントが決まった”という印象に欠けるのが固定焦点レンズの辛いところであるが、Cyber-shotシリーズに共通する"やわらかめの解像感と鮮やかな発色"という特徴が出ている。ハイライトから暗部まで階調表現がきちんとされている絵作りは高く評価できる。
撮影サンプル1の中央部を640×480ドットにトリミングしたもの。コントラストの強い画像の場合、中間色部でノイジーになるのはデジタルカメラの特性であるが、P20においても青空にノイズが載っているもののあまり目立ってはいない。 |
とはいえ、やはり物足りない部分も多い。P1やP30/P50においても同様だが、ホワイトバランスの選択が「屋外/屋内/オート/ホールド(オートで決まったホワイトバランスを固定する)」の4モードしかなく、屋内は白熱電球の設定のみで蛍光灯がなく、蛍光灯下ではオートであっても発色がよくないという点は改善されていない。
撮影サンプル2。F8.0、1/200秒(Exifデータの数値)。1216×912ドットを640×480ドットにリサイズ。マクロモードでの撮影。 |
また、レンズを保護するためのレンズカバーのスイッチが前面のレンズ下にあるのだが、電源スイッチとは別にあるため、ポケットやカバンから取り出して撮影する際には「レンズカバーを開けて」「電源を入れる」という2つの動作をしなくてはならないのは軽快さを損ねている。レンズカバーを閉めたまま撮影ポジションで電源を入れた場合には液晶モニタに「レンズカバーが閉まっています」と表示されるのだが、液晶モニタをOFFにして電源を切ると、次に電源を入れたときにも液晶が非表示のままでレンズカバーの警告が出ない。慣れないうちはシャッターボタンを押したときに「ピピピピッ」という小さな警告音(メモリフルと共通)が出るだけで、「なぜシャッターが切れない?」と一瞬考えることになる。レンズカバーが閉まっていることを検出するセンサ(レンズを遮光しても働くため、カバー部の物理的スイッチを思われる)を装備しているのだから、こちらを電源スイッチ兼用にしたほうが合理的だっただろう。
撮影サンプル2の中央部を640×480ドットにトリミングしたもの。エッジがシャープに出ているため、解像感は良好だ。 |
本体デザインに関しては、光学3倍ズームレンズ搭載機のP30/P50と単焦点/パンフォーカスの本機がほぼ同じ本体サイズというのもいかがなものか。低価格化のためにP30/P50と共通の部材を使う必要があったのかもしれないが、P30/P50自体、P1に似たデザインを採用しつつも一回り大きいため、P1のキュートさがなくなってしまったのが残念だったが、光学系を簡素化したのだから本体デザインにはそれなりに凝って(小型化を図って)ほしかった。
撮影サンプル3。F8.0、1/640秒(Exifデータの数値)。1216×912ドットを640×480ドットにリサイズ。当サイトのデジタルカメラレビューで比較的よく使うアングルの撮影であるが、P20の焦点距離は35mmフィルムカメラ換算で42mmと望遠寄りなのため、他の多くのデジタルカメラ(30mm前後)に比べて画角がかなり異なる。 |
また、これは機能的な不満ではないが、低価格機とはいえインフォリチウム充電池と充電器のセットである「スタミナキット ACCKIT CS-1」(9800円)が別売りなのも少々いただけない。P20は実売価格で2万9800円と、入門機としてはかなり低価格で販売されているが、実際には3万円台後半の製品ということになる。
標準で単3アルカリ乾電池×2本が付属するものの、カタログに「※単3アルカリ乾電池は緊急用です。スタミナキットのご使用を推奨いたします。」に記述されているほどなのだから、標準で充電池と充電器を付属するべきではなかろうか。実際に新品のアルカリ乾電池を使って試してみたところ、約20分間の撮影で約60枚(うち1/3はフラッシュ使用)程度は使えたが、やはり緊急用と考えたほうがよいだろう。なお、インフォリチウム充電池を使用した場合、最大2時間/2200枚以上撮影可能だ(カタログ値)。
撮影サンプル3の中央部を640×480ドットにトリミングしたもの。解像感に欠ける印象を受けるのと青空がノイジーなのは気になるが、階調のとびは少ない。 |
パンフォーカスの低価格入門機としては、オリンパスの「CAMEDIA C-100」があり、131万(有効125万)画素CCDを搭載する点など、同クラスの仕様だ。デジタルカメラ市場の裾野を広げるための入門機として、これらの機種の重要性は高く、各社それぞれに工夫を凝らしつつもトイデジカメとは一線を画す製品作りしているようだ。
入門者向けにも(他のCyber-shotとは異なる)操作性の改良やバッテリ付きのオールインパッケージがあってもよいとは思うが、カメラ本体に関しては、高い画質やクィックなレスポンスなど、ローエンドながら「Cyber-shotシリーズ」の名前に恥じない製品と言えよう。
撮影サンプル4。F4.5、1/100秒(Exifデータの数値)。1216×912ドットを640×480ドットにリサイズ。撮影モードはオートのみで絞りやシャッター速度の操作はできないのが残念だが、普段から持ち歩いてさっと取り出して軽快に使えるのは便利だ。 |
撮影サンプル5。F8.0、1/250秒(Exifデータの数値)。1216×912ドットを640×480ドットにリサイズ。パンフォーカスのため、ピントをどこに合わせればいいのかを迷うような状況では、迷う必要がないというのも初心者にとっては便利かもしれない。 |
撮影サンプル5の右下部を640×480ドットにトリミングしたもの。とはいえ、パンフォーカスでは全域でピントがきっちり合って解像された範囲ではないため、遠景のところではやはり解像感に欠けるきらいがある。 |
撮像素子 | 130万(有効111万)画素1/2.7インチCCD |
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レンズ | 単焦点f=6mm(35mmフィルムカメラ換算:42mm)、F4.5 |
記録媒体 | メモリースティック(4MB付属) |
撮影画素数 | 1216×800(3:2)、1216×912、1024×768、640×480ドット |
撮影距離 | 60cm~∞、マクロモード:15~20cm |
液晶モニタ | 1.5インチTFT |
動画 | 320×240/160×120ドット(いずれも記録媒体容量まで記録可能)、MPEG1 |
インターフェイス | USB、DC入力 |
電源 | 単3アルカリ乾電池×2本(緊急用)、専用リチウムイオン充電池(オプション) |
本体サイズ | 123(W)×46(D)×62(H)mm |
重量 | 187g(本体のみ)/約229g(インフォリチウムバッテリ、メモリースティック含む) |