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【第5回ニュービジネスメッセ】「知恵を出さなければ生き残れない」~孫正義ら3人のベンチャー経営者がディスカッション

1999年02月09日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 (社)ニュービジネス協議会が主催する“第5回ニュービジネスメッセ”が、東京有明の東京ビッグサイトで10日まで開催される。初日の9日は、孫正義ソフトバンク(株)社長、南部靖之パソナグループ代表、澤田秀雄(株)エイチ・アイ・エス社長の3人のベンチャー企業の経営者を招いて“「特別緊急政策提言」今、実行すべき変革に向けて”と題するパネルディスカッションを開催した。

 

 

左から、孫正義ソフトバンク(株)社長、南部靖之パソナグループ代表、澤田秀雄(株)エイチ・アイ・エス社長 左から、孫正義ソフトバンク(株)社長、南部靖之パソナグループ代表、澤田秀雄(株)エイチ・アイ・エス社長



 日本を代表する3人のベンチャー経営者が揃ったことに加え、司会が評論家の田原総一朗氏だったこともあり、定員500人を上回り多数の立ち見が出るほど観客が来場した。このパネルディスカッションの模様を、孫正義氏のコメントを中心にお伝えする。

●孫正義氏が語る南部氏と澤田氏

司会の田原総一朗氏 司会の田原総一朗氏



田原「人材派遣業のパソナグループ代表の南部さんは、自分のことを『ボクはいい加減』という。格安航空券で成長したHISの澤田さんも『思いつきで始める事業が多い』とコメントしている。しかし、いい加減や思いつきで、これほど企業が成長するはずはないと思う。孫さんは、この二人をどのようにご覧になっていますか」

孫正義氏 孫正義氏



「南部さんは、自分で細かな知識を集めるようなことはしないタイプ。しかし、誰が何についてどういうレベルで賢いかということを見抜いている。そして、優秀な人を集める何か始める際には、自分の無知もさらけ出して相手と競合せずに、逆に協力させてしまう。こういう点が優れていると思う。澤田さんは、バランス感覚がいいと思う。いろいろと手を出しているようで、決して無茶はしていない。奥深い計算を常にしている」

●ソフトバンクがめざすもの

田原「孫さんは、もともとは発明に興味があったはずだが、なぜソフトやハードを作る会社ではなく、ソフトを販売する流通業としてソフトバンクを創業したのか」

「私は、アメリカのバークレー大学に留学していた頃にも、研究開発を行なう会社を経営していた。私が社長で、25人くらいの学生や元教授を雇っていた。この会社は、私が日本に戻るときにナンバーツーの人間に任せ、その後彼が京セラに売却して今も存続している。私は、この会社の経営を通じて、商品を売ることがいかに重要であるかを感じた。日本に帰ってきて、改めて一から事業を始める時に、社長として社員に対して責任を果たせる業種は何かと理詰めで考えて流通業を選択した。個人の興味だけで事業を興しても、必ず失敗する」

田原「現在のソフトバンクが何やっているか、外から見ているとよく分からない部分がある。孫さんは、いま何をやろうとしているのか」

「創業以来一貫して、デジタル情報革命を起こしたいと思っている。かつては、パソコンソフトの流通を手がけていたが、今の関心はインターネットにある。インターネットは、一瞬のうちに無限の人に情報を与えられるものだと思っている。個人個人にカスタムメイドの情報を提供できる、従来のマスメディアを超えた新しいメディアになりうると思っている。インターネットを使った電子商取引も、人々の生活を大きく変えることになるだろう。インターネット関連株で一番カネを儲けた会社はソフトバンクだ、という記事が今週の米ウォールストリートジャーナル紙に掲載された。ソフトバンクは世界のインターネット産業の筆頭株主と言ってもいいほどにインターネット関連の企業に投資をしている」

田原「そんなにカネを儲けてどうするんですか」

「金儲けが目的ではない。しかし、天下をとろう、大きな革命を起こそう、と思うと夢だけではダメだと思う。デジタル情報革命という夢を実現するには、それを実行する資金力がないとダメだと思う」

●「危機はチャンス」

田原「ダイエーの中内会長は、かつて『危機はチャンス』とよく言っていた。この点については、どのように考えているか」

「危機の時は、みんな体力が弱っている。この時に、新しい切り口を見つけて、有効なかたちで参入できれば、チャンスになるはずだ。このチャンスを生み出すには、知恵がなかったらダメだと思う。知恵のない経営者はやめた方がいい。知恵を使わないで無謀な参入をしたら、危機は大危機になってしまう」

田原「今後の日本経済をどのようにみているか」

「長い目でみれば楽観しているが、短いスパンではとても危険な状態が続くと思う。今年後半からは、少しは景気は上向くと思うが、5年10年というスパンで見たらたいしてよくない状況が続くだろう。20~30年後の日本経済は大丈夫だと思う、21世紀初頭は厳しい状況が続く」

田原「その原因はどこにあるのか」

「日本は、工業社会の強みは持っているが、情報社会の強みは持っていない。インターネットにしろ、コンピューター関係の技術はアメリカが進んでいる。ハードの時代には日本でも、太刀打ちできたが、情報社会になると、映画、音楽、ソフト、コンテンツなどどの分野も日本はアメリカに太刀打ちできなくなってしまった。教育、人材、インフラなど全ての面で日本は遅れている」

田原「日本が追いつくにはどうすればいいのか」

「インターネットの世界では、イスラエルの社員4~5人がしかいないようなベンチャー企業が、大成功を納めたケースもある。土地や人材やカネがなくても、アメリカと勝負ができる分野はいくらでもある。日本がアメリカに追いつくには、知恵を限界まで働かせて努力するしかない。そのためには、インターネットが好きで好きでてまらない若い人たちに、チャンスをあたえることが重要だ」

    ニュービジネス協議会問い合わせ先:TEL.03-3584-5665

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