TVアンテナから伸びる同軸ケーブルを利用して、ビル内にLANを構築できる、“Digital
Way”というTV共聴型LANシステムがある。10Mbpsのデータ通信が行なえる上、新たな配線工事を必要としないため、低コストでLANが構築できるのが特徴。TVの画像にも影響はないという。
これを開発したのが、ベンチャー企業に研究開発環境を提供する“京都リサーチパーク”に拠点を置く(株)ランゲート。同社は“Digital
Way”で、'97年度のNBK大賞も受賞している。この賞は、(社)関西ニュービジネス協議会(NBK)が、市場性、独創性のあるビジネスを展開する企業1社に対して、毎年贈っているもの。
今回、Digital Wayの販売代理店である(株)デジタルペーパーの大中忠生・代表取締役社長に、同システムの開発経緯や事業展開などについてお話を伺った。同氏は、Digital
Way開発者のひとりでもあり、'96年11月のランゲート設立にも取締役として携わっている。今年4月末には、内藤健作氏に代わってランゲートの代表取締役社長に就任する予定だという。
Digital Way開発の経緯
――そもそも、なぜTVの同軸ケーブルでLANを構築しようと考えたのですか。「TVの同軸ケーブルをスペクトルアナライザーで調べてみると、使用されていない帯域が結構あるんですね。それで、これを何かに使えないかということになったのです。はじめは、震災時などに非常用信号を流そうという案も挙がっていたのですが、同軸ケーブルは熱によって周囲のポリエチレンが融けてショートしてしまう上、第一ビジネスにならない。それではコンピューターの信号を流せないかと考えたわけです」
「開発に関わったのは3人。いずれも電子関係の知識は素人に毛が生えた程度でした。まず、TVの同軸ケーブルと10BASE-2のケーブルの断面には違いがないように見えたので、同軸ケーブルでパソコンを動かしてみました。壊れやしないかとひやひやしましたが、ちゃんと動くんですね。それで、TVとパソコンを同時に動かしてみよう、となったわけです。はじめは動かなかったのですが、これも技術的にはさほど困難もなく解決できました。つまり、このシステムは、アイデアを出しただけといってもいいかもしれません」
――その独創性がNBK大賞につながったと。
「ランゲートのような小企業の受賞は珍しいと言われています。Digital Wayの将来性、技術の波及効果が評価されたものと考えています」
“Digital Way”における直列ユニット『WebGate-2』(2万8000円)。上の端子がTV用、下の端子がコンピューター用。1本の同軸ケーブルに6個程度まで直列に接続できる。 |
Digital Wayの販売実績および展望
――実際にDigital Wayは、どの程度導入されているのですか。「学生マンションや分譲マンションが主流で、マンション3棟ですでに導入済み、約20棟1000室で導入が決定しています」
「京都を拠点に、新幹線1本で行ける東京から九州までを中心に営業活動を行なっています。北海道にも行くことがありますが、地域性が残っていて幾分クローズドな町のほうが反応がいいようですね」
――Digital Wayの販売はすべてデジタルペーパーが行なっているのですか。
「そうですね。もともと私は、化学、薬学系の学術論文をデータベース化し企業向けに販売するために、デジタルペーパーを設立したのですが、資金不足もあって、アルバイトのような気持ちで開発したのが、Digital Wayだったんですよ。共同開発者が3人いたため、別会社としてランゲートを設立し、販売は3人それぞれで行なうことになったのですが、実質的にはデジタルペーパーのみが販売を行なっています。デジタルペーパーにとっても、売上の約80パーセントがDigital Way。今後、100パーセントに近づいていくでしょうね」
――今後の事業展開についてはどうお考えですか。
「Digital WayをOEM供給することも視野に入れています。同軸ケーブルにTVとコンピューターの2回線を流す技術については特許を取っており、いわばシェアは100パーセントということですから」
「どのマンションにもTVは導入するはずです。今ではBS放送も普及し、CS放送はどうですか、という時代になっている。その延長でインターネットもどうですか、と提案していきたい。Digital Wayの販売と同時に、衛星放送とインターネットを組み合わせたマルチメディアサービスも展開していきたいと考えているんですよ」
(報道局 浅野広明)
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