(株)東芝は14日、東京・港区の本社に報道関係者を招いて記者懇親会を開催した。同社代表取締役社長の西室泰三氏は、モバイル向けインターネット事業に注力するため、新たな社内カンパニー“iバリュー クリエーション社”を4月に設置すると発表した。
西室泰三代表取締役社長 |
西室社長は席上、東芝が2000年に注力する4つの事業として、“インターネットサービス”、“メディアコンテンツ”、“メディアカード”、“デジタル放送”を挙げた。
インターネットサービス
このうち、インターネットサービスにおいては、モバイルとワイヤレスによるインターネットアクセスが中心になるという見通しのもとで、サービスを展開するという。この展開のため、現在8つある社内カンパニーに、新たにiバリュー クリエーション社を加える。iバリュー クリエーション社には、モバイルを核にしたインターネットサービス事業を行なう“WebTopサービス事業部”と、インターネットやデジタル放送向けのメディアコンテンツ事業を推進する“メディアコンテンツ事業推進室”を置く。インターネットコンテンツでは、現在1日あたり100万ヒットを超えるアクセスのある“*駅前探検倶楽部”と、“*フレッシュアイ”という2つのポータルサイトを中心として、コンテンツメニューの充実を図る。特に販売を重視し、音楽、旅行チケット、書籍などの販売を行なう予定という。さらに、株価、投資信託情報をインターネットを通じて証券会社の顧客に向けに提供するサービスを開始する。その第1弾として、4月に松井証券(株)向けにサービスを提供する。来年にはモバイル端末によるトレーディングサービスも提供するとしている。
*駅前探検倶楽部:駅の電車時刻案内と周辺の地図、駅前の情報を提供しているウェブサイト。現在、関東、関西、中部の情報が提供されている。(http://ekimae.toshiba.co.jp/)
*フレッシュアイ:2時間ごとにデータベースが更新され、“今日のページが検索できる”という特徴を持つサーチエンジン。(http://www.fresheye.com/)
さらに、企業やビジネス向け分野に置いて、従来行なってきたシステム・サービス・プロバイダー事業に加えて、アウトソーシングサービスやASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)の推進を図るため、情報・社会システム社内に“eネット事業部”を14日付けで設置した。これらの企業向け事業には、2003年までに2500億円を投資、2003年度のこれらインターネット事業の売り上げとして、5000億円を見込むとした。
「コンピューター、コミュニケーション、コントロールの3つの“C”の融合を目指す」東芝取締役上席常務で、情報・社会システム社の岡村正氏 |
メディアコンテンツ
メディアコンテンツ分野においては、先の米アメリカ・オンライン社(AOL)と米タイム・ワーナー社の合併、米ワーナーミュージック社と英EMI社の合併を受け、これら企業との新たな提携関係の構築と関係強化を図る。また、映像および書籍・出版分野での(株)角川書店との協力関係の強化を通じて、コンテンツを準備して事業の拡大を目指すという。メディアカード
メディアカードにおいては、昨年、松下電器産業(株)、米SanDisk社と東芝で提唱し、今年1月にはコンソーシアム“SDカードアソシエーション”を設立した“SDカード”の普及を図る。同社はSDカードに使用されているNAND型フラッシュメモリーの世界最大の製造メーカーであり、SanDiskと共同でSDカード向けのフラッシュメモリー生産工場も立ち上げる。「東芝は本当に変わったと言われるようにしたい」という、東芝上席常務でデジタルメディア機器社社長の溝口哲也氏 |
デジタル放送
デジタル放送分野では、日本で年内に開始予定のBSデジタル放送の衛星基地局6局中、5局を同社が受注、また沖縄サミット時に行なわれるデジタル試験放送にあわせて、対応セットトップボックスやチューナー内蔵テレビを提供、上流から下流までをサポートするとした。最後に西室社長は、今年が東芝設立125周年であることを挙げ、「昨年は悪夢のような1年であったが、今年は21世紀に向けて新たな成長に向かう年にしたい」と述べて締めくくった。