W-CDMA方式を採用したNECの携帯電話とCCDカメラ内蔵のビューア(両方とも試作器)。両デバイス間のデータ転送にBluetoothを用いる |
Bluetoothは、現在半導体メーカーによるチップセットやモジュールの開発が着々と進行している状況で、2000年の夏から携帯電話、パソコン、家電の順に製品化されることになる。1999年末にはEricssonがいの一番にBluetooth対応の携帯電話とヘッドセット(※9)を発表している。COMDEX/Fall '99では、携帯電話、PCカード、デジタルカメラなどの試作品のほか、SonyがBluetoothインターフェイスを備えたメモリスティック「Infostick」、NokiaがBluetooth携帯電話から利用可能な自動販売機などを参考展示した。
EriccsonのBluetoothヘッドセット |
製品が出た後もBluetoothインターフェイスLSIの集積化と量産効果による低価格化が進む。そして、2001年の春にはBluetooth SIGが普及のための最低ラインとして定めた「1チップ化・5ドルの生産コスト」が達成され、爆発的な普及を迎えることになる。これが決して夢物語でないのは、Bluetoothが業界標準として完全に認知されたからである。標準仕様が決まったあとは、インターフェイスLSIの機能的な差はもはやあまりなく、むしろ闇雲に製品化と低価格化を追求していかなければ、他社との競争に勝てない。
MicrosoftのBluetooth SIG参加により、Windows OSへの搭載も近くなり、Universal Plug & Playにも取り込まれる。また、国内ではNTTドコモやIDO(日本移動体通信)という大手キャリアが、次世代携帯電話サービス「W_CDMA(※10)」でBluetooth採用を決めているという追い風がある。とにかく今までになく製品化が早いという点は間違いないようだ。
図8 Bluetoothのソフトウェアスタック。半導体メーカーの提供するモジュール、チップセットと、HCIの上位レイヤで動作するホストに別れる。ホストの開発に時間がかかるため、製品化に際してはサードベンダーのソフトウェアスタックを利用する場合が多くなると考えられる |
※10 W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)……限られた帯域幅を多くのユーザーで有効に利用するための多元接続方式の1つ。CDMAと技術的に大きな違いはない。ただ、移動体通信として現在用いられているcdmaOneの帯域幅1.25MHzに比べて広い帯域を使うという点が異なっている。ただ、一般に「W-CDMA」という場合、次世代移動体システム「IMT-2000」の無線通信として日本が提出した仕様と実際のサービスを指すことが多い。W-CDMAのサービスでは、Webブラウズやメールのほかに動画配信や遠隔医療、テレビ会議など幅広いアプリケーションが提供される。DDI、IDOが2000年夏、NTTドコモが2001年の3月、日本テレコムが2001年秋にそれぞれサービス開始を目指している。
※ HCI(Host Controller Interface)……モジュールとホストの間で行なうやりとりを規約したインターフェイス。Bluetoothでは、ホストからモジュールを制御するためのコマンド、他のBluetoothデバイスとのリンクや状態をホストに通知するイベント、実際に送受信されるデータのパケットタイプが用意されており、トランスポート層からピコネット内のBluetoothデバイスの制御を可能にする。
※ Link Manager……他のBluetoothデバイスとの通信を確立・制御するためのサービス。LMP(Link Manager Protocol)を経由し、他のデバイスとの接続を確立し、データの送受信を行なう。具体的には、1接続の確立、2ネームリクエスト、3デバイスの認証、4データあるいはデータ/音声のモード設定、5パケット交換および、6データ送受信、7Sniff、Hold、Pageなど低電力モードのセットアップ、などを行なう。