このページの本文へ

すべてのデバイスはBluetoothに通じる

2000年04月03日 11時56分更新

文● 月刊ASCII network PRO

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 Bluetoothは、デバイス間で最大1Mbpsでのデータ送受信を実現する。非対称伝送時の実効速度は下り721kbps、上り57.6kbps(対称伝送時は432.6kbps)で、回線交換とパケット交換の両方式に対応する。さらにBluetoothの場合、非同期通信時はデータ送受信のほかに64kbpsの音声専用チャネルを3つ同時に確保できるという特徴を持つ。つまり音声通話をしながらWebをブラウズするといったことが可能なのだ。また、伝送範囲は10mと100mが選択できる。特に10m範囲のクラス2/3のBluetoothデバイスでは送信出力を上げるためのパワーアンプが不要であり、待機時0.3mAという低電力が実現される。こうした仕様になっているのは、Bluetoothがパソコンよりむしろ携帯電話に主眼が置かれているからと言えるだろう。また、Bluetoothが使用する周波数帯域は免許不要な2.4GHz帯で、変調方式にはIEEE802.11やSWAPと同じ周波数ホッピングスペクトラム拡散方式(※6)が採用されている。Bluetoothでは79個のチャネルを1秒間に1600回変更(ホッピング)しながら、データの伝送を行なう。

 さて、競合するIEEE802.11と比べて決定的に異なるのは、Bluetoothがキャリアセンスが不要である点だ。一般に移動体通信ではTDMA、IEEE802.11やHomeRFのSWAPではCSMA/CD(※7)などのアクセス制御方式でキャリアセンスを行なっている。いわば高速道路では、きちんと前後を確認してから車線変更を行なっているわけである。しかし、Bluetoothでは通信中か否かを問わず、チャネルを1秒間に1600回も切り替えながら、データを送り続ける。そして、衝突した場合はコリジョンディテクトとして再送を行なう。これは2.4GHz帯域での他の通信方式との干渉が予想されるためで、キャリアセンスにかかるオーバーヘッドを解消する方法を採用したのだ。これにより、Bluetoothは信号の状態が良好なときだけでなく、激しい干渉が起こる状態でも性能の低下を段階的に抑え、安定的な通信を行なえるようになっている。

 しかし、考えてみれば非常に傍若無人な通信方式といえるかもしれない。同帯域の他の通信に干渉してまでも伝送効率を優先させるわけだから、当然電波法上好ましい伝送方式ではない。このためエチケットルールとして、消費電力も高く、干渉を与える範囲の広いクラス1デバイスは屋外での特定用途以外で製品化されるのは推奨されていない。また、使用されないときは、トラフィックが発生しない低電力モードに移行させることが求められる。

 しかし、国内でも郵政省の官報により、このキャリアセンスレスの通信方式が利用できるようになった。これもひとえにBluetoothに対する期待の大きさからといえるだろう。

※6 周波数ホッピングスペクトラム拡散方式……スペクトラム拡散(SS)無線通信技術の一種でFHSSとも書く。一次変調でデジタル化した信号の中心周波数を、乱数を用いて変化(ホッピング)させる。通話の秘話性と干渉耐性が高められる一方、直接拡散方式に比べてスループットが落ちるという欠点を持つ。

※7 CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)……IEEE802.3標準で定められた媒体アクセス制御(MAC)方式。Ethernetの場合、複数のノードが同一伝送路を共有するため、経路上にデータが同時に送られると衝突(コリジョン)を起こす可能性がでてくる。コリジョンが起こると送信データが破壊され、データの品質が保証できなくなってしまうため、CSMA/CDという方法で衝突を検出し、制御、管理する。CSMA/CD方式では、データを送るとき、まず伝送路上を見て他のデータが流れているかどうかを確認する。これをキャリアセンス(CS)と呼ぶ。そして、もし衝突が起こった場合はその衝突信号を検知し、ランダムな時間を待ってデータの再送を行なう「コリジョンディテクト(CD)」という作業を行なう。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ