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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第54回

ブログの炎上を引き起こす匿名性

2009年02月13日 10時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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発信者情報の開示で当事者による解決を

 もう1つ注目すべき判決が、1月28日に出た。「はてな」のブログで住所をさらされたウェブサイトの管理者が、相手の発信者情報の開示を請求し、はてなが拒否したため訴訟を起こした事件で、裁判所が発信者情報の開示を認めたのだ(関連記事)。私も、はてなに発信者情報の開示を求めたことがあるが、今に至るも回答がない。このように司法の場で発信者情報の開示が命じられたことは、被害者を救済する上で画期的だ。

 はてなブックマークでは、「死ね」とか「殺意を抱く」といった表現が日常的に使われており、私は何度も近藤淳也社長などに改善を求めたが、まったく改善されていない。社外取締役の梅田望夫氏は「スルー力が必要だ」などと開き直っていたが、自分のブログに批判が集中すると、「はてぶのコメントには、バカなものが本当に多すぎる」と書いて「炎上」した。

 「発信者情報を開示すると内部告発ができなくなる」といった反論もあるが、そんな貴重な情報は名誉毀損や脅迫にはならない。本当に身元を隠そうとすれば、いくらでも手段はある。発信者情報については、プロバイダ責任制限法で一定の要件のもとで開示することが定められているので、はてなのように悪質な業者に対しては、簡易裁判所に少額訴訟を起こすことをおすすめする。損害賠償額を60万円以下にすれば、本人訴訟で1日で終わる。手数料も6000円以下だ(ただし、被告が通常訴訟への移行を望んだ場合は通常訴訟になる)。

 サービス提供者にとっては、中傷だろうと脅迫だろうとアクセスが集まればいいのだろうが、結果的にはそれが「はてなは恐い」といった評判になってスポンサーを減らしていることに気づくべきだ。被害者が加害者に抗議する手段を提供しないと、ネット上の紛争は解決できない。警察が出てくる事態を避けるには、システム管理者が発信者情報を開示して当事者による紛争の解決に協力すべきだ。


筆者紹介──池田信夫


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に 「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。

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