「パナソニックが目指しているのは、デジタル時代の『あかるいナショナル』だといえる」
パナソニック代表取締役専務兼AVCネットワークス社社長の坂本俊弘氏は、パナソニックが目指す商品づくりについて、こう切り出した。
「♪あっかるーいナショナル」のテレビCMは、TBS系列の人気時代劇ドラマ「水戸黄門」が放映されていたナショナル劇場で、必ず見ることができた。
30代後半以上の読者ならば、そのメロディを多くの人が口ずさむことができるだろう。
「あかるいナショナルは、昭和の日本の家庭を象徴する光景。ナショナルの蛍光灯の下で、ナショナルのやぐらコタツに入って、みんなでテレビを見る、という家族の団らんがあった。今後、パナソニックが提案していくデジタル版『あかるいナショナル』は、薄型テレビを中心に、各種AV機器を接続し、さらにインターネットやホームセキュリティをつなげ、テレビの前に家族全員が揃い、すべての機器をリモコンひとつで利用することができる世界。家族の絆を取り戻すことができる世界を提案する」と坂本専務は続ける。
2008年1月、米ラスベガスで開催された「2008 International CES」の初日。坂本専務は、この日の基調講演のトップバッターとして登壇した。
ここで示したのが、「Digital Hearth(デジタル囲炉裏)」であった。
坂本専務は、その意味を次のように語る。
「人間は、大昔から火のあるところ、囲炉裏や暖炉のあるところに集まり、そこで、家族や友人がコミュニケーションをし、生活をしてきた。その囲炉裏と同じように、人が集まるための中心的役割を果たすのが、いまは大画面テレビになるのではないか」
大画面テレビを居間の中心に置き、そこに様々なAV機器をリンクさせて、家族が楽しい時間を過ごすことができる。これが、Digital Hearthの考え方だ。
日本でいえば、まさに「あかるいナショナル」の言葉によって想起されるシーンともいえる。
坂本専務が「デジタル版あかるいナショナル」、あるいは「21世紀版あかるいナショナル」と語ったのは、今回の取材が初めてのことだ。
だが、坂本専務は、「実は、1月からこの言葉を思いついていた。しかし、言い出す機会を逸していた」と、苦笑いしながら明かす。
CESでの基調講演では、「Digital Hearth」となったが、坂本専務の頭のなかには、明確に「デジタル版あかるいナショナル」のイメージがあったに違いない。
「これが、松下電器の時代から培ってきた価値観であり、脈々と続くDNA。そして、パナソニックになっても、我々は、形を変えて、同じことをやろうとしている」
次ページ「Whole Life Connectivity」に続く
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