Whole Life Connectivity
CESの基調講演では、もうひとつ、「Whole Life Connectivity」という言葉を提示した。
人生や生活そのものを、すべてつなぐのがパナソニック商品であるというメッセージだ。
「リンクを、さらに広げて、一歩先の生活スタイルを生み出すのがWhole Life Connectivityが示すメッセージ。これまでのリンクは、家のなかのものが対象であったのに対して、近い将来には、外にもリンクを広げていく。パナソニックには、AVC機器や生活家電のほかにも、カーエレクトロニクス、携帯電話の事業もある。今後は、家と自動車をつなげた提案なども加速したい」
パナソニックは、昨年後半から今年前半にかけて、全米100家族を対象に、パナソニックブランドの複数のHD(ハイディフィニション)関連商品を試用提供し、その意見をフィードバックしてもらうというキャンペーンを行なった。
実は、それに参加した家族からは、個別の商品そのものの評価に加え、「これらのデジタル機器を使いはじめてから、家族と一緒に過ごす時間が増え、コミュニケーションする時間が増えた」という声が多数あがっていたという。まさに、パナソニックが目指す、「Whole Life Connectivity」、「Digital Hearth」を、パナソニック商品で実現したことになる。
Whole Life Connectivityという言葉は、欧米では、その意図が、比較的スムーズに認識されるという。だが、日本では、それに最適な言葉がない。
今年秋に幕張メッセで開催したCEATECでは「ネオ・ビエラリンクの世界」、「空間まるごと 一歩先のくらし」という言葉で、Whole Life Connectivityを表現してみせた。
「Whole Life Connectivityを実現するには、つながることをさらに強化した製品を投入し、ユーザーインターフェースも進化させなくてはいけない。リモコンのボタンひとつだけで、テレビ画面の誘導に沿って、様々な操作ができるといったものも必要になる。そこに我々の挑戦がある」とする。
その点で、リモコンをはじめとするユーザーインターフェースは重要なポイントとなる。
坂本専務は、CESでの基調講演終了後、筆者の質問に対して、「いまのリモコンの完成度は、50点ぐらい」という厳しい言葉を発した。ここ数年、リモコンの改良を重点課題とし、大幅な改良を加えてきただけに、最初は、その言葉の意味を推し量りかねた。
だが、坂本専務は、「Whole Life Connectivityという方向性を打ち出した今日を境に、完成度は50点以下に下がった。挑戦すべき大きな、新たな課題ができた」と、厳しい表情で答えていたのを思い出す。
「Whole Life Connectivity」、あるいは、「Digital Hearth」といったパナソニックの新たな提案によって、これまでのリモコンとは異なる要件が求められ、評価のハードルがあがったことを自らに言い聞かせるものだったともいえよう。
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