朝日新聞社が初の赤字決算
朝日新聞社が21日発表した9月期中間連結決算は、営業損益が5億円の赤字、純損益は103億円の赤字となった。同社が赤字を計上したのは、決算を公表するようになって初めてだ。今期は投資有価証券の売却損44億円という特殊要因があるが、中間決算は4期連続の減収だ。広告収入も販売部数も減って、売上高は2698億円と前年同期の4.4%減である。新聞業界では健全経営とみられていた朝日新聞社が赤字に転落したことは、驚きをもって迎えられた。
新聞が斜陽化するのは、日本だけの現象ではない。米国の発行部数調査機関ABCによると、今年4~9月の新聞の発行部数は、昨年に比べ4.7%減った。有力紙も部数減・広告収入減が止まらない。ニューヨーク・タイムズ社は20日、四半期の配当を1株23セントから6セントへ大幅に減らすと発表した。今年10月期の売り上げは前年同月比9.4%減で、赤字転落の懸念が強まってきたためだ。米最大部数の"USA TODAY"紙を発行するガネット社は社員の10%に当たる3000人をレイオフし、ロサンゼルス・タイムズ紙などを発行するトリビューン社は、記者を7年前の半分に縮小する方針を明らかにした。
紙を捨てる新聞
紙媒体を捨てる新聞も出てきた。11月25日に創刊100年を迎える米国の名門紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」(CSM)は、全国紙として初めて来年4月からウェブだけの電子新聞としてやっていくという社告を出した。最盛期には20万部だった発行部数が5万部まで落ち込み、昨年は1890万ドルの赤字で、全国紙としての販売網を維持することが不可能になったからだ。
ただ、この方針転換がうまく行くかどうかはわからない。CSM紙の電子版のアクセスは月間500万ページビュー、ユーザー数は月間150万人だ。私のブログでも月間ページビューは200万PV近いので、その2.5倍のアクセスで95人の社員の雇用を維持できるとは思えない。
オンライン広告は日本でも増えており、図1のように昨年、インターネットは雑誌を抜いて第3位の広告媒体になった。このペースで行くと3年後には新聞と逆転するが、オンライン広告の増収は紙媒体の減収を補えない。その単価は紙の1割程度だからである。
この連載の記事
-
最終回
トピックス
日本のITはなぜ終わったのか -
第144回
トピックス
電波を政治的な取引に使う総務省と民放とNTTドコモ -
第143回
トピックス
グーグルを動かしたスマートフォンの「特許バブル」 -
第142回
トピックス
アナログ放送終了はテレビの終わりの始まり -
第141回
トピックス
ソフトバンクは補助金ビジネスではなく電力自由化をめざせ -
第140回
トピックス
ビル・ゲイツのねらう原子力のイノベーション -
第139回
トピックス
電力産業は「第二のブロードバンド」になるか -
第138回
トピックス
原発事故で迷走する政府の情報管理 -
第137回
トピックス
大震災でわかった旧メディアと新メディアの使い道 -
第136回
トピックス
拝啓 NHK会長様 -
第135回
トピックス
新卒一括採用が「ITゼネコン構造」を生む - この連載の一覧へ