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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第42回

トヨタというバブルの崩壊

2008年11月11日 16時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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「パラダイス鎖国」はもう続かない

 このような「ガラパゴス」とか「パラダイス鎖国」などと呼ばれる状況は、1990年代以降の日本の情報産業の特徴でもある。家電では世界市場を制覇した日本の電機メーカーがPCやインターネットへの対応を誤り、国内市場でコップの中の争いを続けてきたからだ。しかし携帯電話に典型的にみられるように、こうしたガラパゴス型産業構造はもう維持できない(関連記事)。

 これまでは日本語の壁や複雑な流通機構によって鎖国を守ってきたが、国内市場は成熟し、大きな利益は見込めない。新興国に向けて低コストの製品を作ったり、海外生産によってコストを削減したりする努力が必要だ。しかし、それに成功した日本のIT企業は皆無だ。先週は三洋電機が消えることがほぼ決まったが、内向きの「総合電機メーカー」はもういらないのだ。



強い円を活かして豊かな国を


 今の金融危機は一時的なパニックだが、それをきっかけとして起こったドル安の流れは元に戻らないだろう。世界のGDPの約2%を占める米国の経常赤字(過剰消費)が日本や新興国の経常黒字(過剰貯蓄)を吸収してきた構造は、もう維持できないからだ。現在の1ドル=90円台という為替レートは、ほぼ「均衡為替レート」に近く、かつてのような円安に戻ることはありえない。日本の貿易黒字はゼロに近づき、8月には26年ぶりに赤字になった。もう「輸出立国」の時代は終わったのだ。

 しかし円が高いのは、本来いいことだ。強くなった購買力で海外から安い輸入品を買って「円高メリット」を消費者が得られるようにすればいいのだ。そのためには携帯電話のSIMカードやテレビのB-CASのような非関税障壁を撤廃して、内外の競争を促進する必要がある。また強い円は投資をひきつけるので、企業買収などを自由化し、GDPの3%以下しかない対内直接投資を増やすことも重要だ。

 しかし高賃金の日本で、部品から完成品まで製造して新興国に輸出することはむずかしい。IT産業もグローバル化して世界各国に拠点を置き、国際的に水平分業するしかない。安く生産できる部品は新興国から輸入して日本はシステム開発に特化し、強い円の資本力を活かして世界各地で最適生産すればいい。効率の悪いガラパゴス産業がトヨタなど一部の輸出企業におんぶしてきた構造を変え、日本を真に豊かな国にする改革が必要だ。


筆者紹介──池田信夫


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に 「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。

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