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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第40回

著作権法は業界団体のための法律ではない

2008年10月28日 10時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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フェアユース導入へ

JASRACなど7団体はフェアユースに対して要望書を提出するなど、不満を表明している

 著作権法の改正をめぐって、動きが活発になってきた。

 最大の焦点となっていた「フェアユース」について、政府の知的財産戦略本部(以下、知財本部)は導入の方針を固め、29日の「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」に「日本版フェアユース規定」の原案を提出する。

 これに対して、日本レコード協会やJASRACなどの業界団体は次のような要望書を知財本部あてに提出した。


 当該調査会には、かかる法制化により大きな影響を受ける権利者を代表する立場の者が構成員として参加していないばかりか、権利者あるいはその関係者に対する意見の聴取すら行われておりません。「創造」、「保護」、「活用」は知財計画の重要な柱と認識しておりますが、権利者が不在のまま「活用」ばかりに話が及ぶとすれば、甚だ公平さに欠けた運営と言わざるを得ません(強調は引用者)。

 この要望書は、業界団体が著作権法を理解していないことをよく示している。この専門調査会の構成員は学者や弁護士で、ほとんどの人が著書を書いている。つまり彼らは著作者であり、むしろ権利者を代表する人々だけで議論が行なわれているのだ。

著作権法を誤解する業界団体

 ところが業界団体の脳内では、権利者とは彼らの資金源になるレコード会社であり、それ以外の著作者は「活用」ばかり話す消費者だと思い込んでいる。今回に限らず、著作権をめぐる議論が混乱する最大の原因は、このように業界団体が著作権法を誤解していることにある。

 日本の著作権法は「無方式主義」だから、著作物を発表するとただちに権利が発生する。あなたがブログの記事を書いてアップロードした瞬間に、あなたは著作者になり、著作権法に定めるすべての権利を持つのだ。Universal McCannの調査によれば、日本でブログを書いているユーザー数は約1410万人(関連資料)。これはJASRACの会員1万4500人の約1000倍である。

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