先生お怒り! デジタル放送は全然フルHDじゃない
CEATEC JAPAN 2008初日、東芝ブース「超解像」の紹介コーナーで、われらがAV先生こと麻倉怜士さんが怒っていた。なんでも各テレビ局が放映しているデジタル放送はもー全然フルHD解像度(1920×1080ドット)じゃないというのだ。
たしかに地デジは知っていたけど、BSデジタルもそうなのかなあと思っていると、どでんと冒頭のフリップを紹介、コーナー参加者の度肝を抜いた。「BSJはこのごろキレイになってきましたね」などとニコニコ近況を話しながら「これは私調べというところがポイントですからね」と念を押す麻倉先生。
東芝製の液晶テレビ「REGZA ZH7000」をバックに、地デジの解像度(1440×1080ドット)がこんな感じですと話し(左)、DVDなんて720×480ドットしかないんですよ、DVDメディアが薄いからって映像まで薄くなっちゃうことないですよねとジョークをとばした(右)
テレビ番組の画質につづけて、DVDの画質についても言及した。たしかにこれをただ拡大するだけの「アップコンバート」で見るなんてもったいない。せっかくフルHD解像度に対応した液晶テレビの性能が全然発揮できておらず、なんだかぼやけた映像を見ることになってしまうのだ。
最近はYouTubeが観られる最新プラズマテレビなども発表されているが、せっかくの大画面で、ノイズでザラザラになった猫ちゃんのビデオを観ているとなんだか寂しくなってきて「お遊び感覚で楽しむなら面白いけど……でも、なんか違うんでないの?」とひねくれたことを考えてしまうのは筆者だけではないはずだ。
解像度が低いなら、超解像すればいいじゃない
そこで登場するのが東芝が今期の液晶テレビに投入する超解像技術「レゾリューションプラス」だ。
元の映像の解像度がテレビ側の最大表示解像度に全然及ばない低画質なのであれば、それをただ拡大するだけではダメに決まっている。
そんなら元の映像を徹底的に高画質化することで、限りなくフルHD解像度(1920×1080ドット)に近いDVD映像(720×480ドット)を作ってしまおうというのがこの発想だ。
日立製作所も超解像を参考展示していたが、東芝の「再構成処理」という方法とはやや異なっているという。東芝の方法をかいつまんで説明すると、プロセスは大きく「解析」「循環」の2つだ。
まず1つ目のプロセスとして、元となる映像を、細かい模様で構成される「テクスチャー部」、テクスチャー部の輪郭となる「エッジ部」、そしてテクスチャー部とエッジ部を除いた「平坦部」に分類。ここでLSIがテクスチャー部に「超解像」処理の狙いをつける。
2つ目のプロセスは、まず一度1920×1080ドットのフルHD画質にアップコンバート。今までのアプコン処理はここまでだったが、ここからが本題だ。つづけてそれを、あえて元の映像解像度にダウンコンバートして、元となる映像と比較する。そこでの差分を検出することで、理想の状態に近づけるよう補正できるというのだ。
この循環はくりかえされることでどんどん高画質化していくのだという。極端なことを言えば「朝まで放っておいてくれれば映像をピカピカにしておきますよ」という仕組みだ。
それじゃ次は日立へ――先生ちょっと浮気性?
というわけで「超解像講座」を終え、拍手を受けた麻倉さんは「これが終わったあとは、日立製作所のブースにいますから」と姿を消していった。同じ超解像技術に力を入れるメーカーを渡り歩くというのはちょっと面白い。
今後YouTubeやニコニコ動画などネット動画は存在感を増していくことだろう。その一方で、その映像の多くは低解像度のままだ。今回の超解像がどこまで普及するか、またそのプロセスがまったく気づかれないほどに高速処理されるかに注目したい。

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