塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第22回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
失敗の創造性
2008年10月19日 15時00分更新
Macを作るアップルがシリコンバレーという土地で生まれたのは、偶然ではないのだ。失敗推奨装置としてのMacは、「アイデアがあったら失敗を恐れずにまずはかたちにしてみる」というシリコンバレーの風土、そのものなのである。Macは、「ミクロ・シリコンバレー」であるといっても過言ではない。
大公開時代、ウェブもまた「アイデアをとりあえずかたちにしてみる場」のひとつである。TwitterやFeecleといった「つぶやき系」のサービスが普及しつつあるため、ブログやポッドキャストのようにある程度のかたちを整えたものを作る必要もなくなってきた。
考えたこと、思い立ったことを、とりあえず短い言葉でウェブに公開してみる。するとさまざまな反応が返ってくる。感じたことをまた公開する。こうしたやり取りが、アイデアを膨らませていくのだ。
アイデアが響きあうウェブ。失敗を恐れずにまずは表現してみる場、ウェブ。こう考えると、ウェブが「マクロ・シリコンバレー」に見えてくる。
大公開時代、我々はウェブによって他人の表現にたくさん接し、自分のセンスを磨いて自ら新たな表現を公開していく。するとウェブ上に現れる多くの表現、創作の成果が共鳴しあって、次の創造が導かれる。こうして人や社会のプラス面をクリエイティブに増幅していく装置こそ、ウェブである。ウェブは社会の創造性を高める仕組みであり、雄大な社交的キャンバスなのだ。
(次ページに続く)
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