「重要な欠陥がある」と明記されれば……
実際は、経理部門だけでなく、販売、購買などでプロジェクトチームを作って対応する必要がある。架空取引や売上計上のダブりがないか、計上の漏れがないかなど、販売や購買、会計で発生しうるリスクを事前に想定して、直接の業務担当者以外に評価者を置く必要があるのだ。企業にとっては膨大な作業が発生することになるわけだが、佐藤氏は次のように語る
「長い目で見れば業務の透明性が高まり、不正が起きにくくなります。また特定の人に権限が集中することがなく、業務の引き継ぎもやりやすくなる。経営者にとっては業務リスクの“見える化”ができるなど、導入のメリットは少なくないです」(佐藤氏)。
経営者は内部統制に問題がなければ内部統制報告書に「有効」と明記し、重大な粉飾につながりかねない問題が見つかれば「重要な欠陥がある」と明記し、それを投資家にも情報開示する必要がある。
重要な欠陥があってもただちに上場廃止や罰則の対象とはならず、たとえば期中に不備が発見されても期末までに直せば有効となる。また、内部統制に問題があっても必ずしも「粉飾が行なわれている」、あるいは「決算が不正確」、ということを意味するものではない。とはいえ、「重要な欠陥がある」と明記されれば、株価下落につながる可能性はあるだろう。
ここがポイント!
IT業界に起きやすい不正
IT業界の主力商品ともいえるシステムの納入は、目に見えるものではないため、実は不正が起きやすい。システムそのものが、スペック通りに稼動するかしないかは、使ってみないとわからないし、客先の要求通りに独自に作ったものなのか、あるいは既製品のシステムを転用したものか、なども確認するのが難しい。
実際に大手のシステム会社の子会社では、実態のない商品を複数の取引先と売買したとみせかけ、帳簿上で収益をかさ上げする「循環取引」が行なわれる事件があった。
株価に連動して役員報酬が上乗せされるストックオプション制度を導入している企業において、こうした不正が起きやすい。実態より売り上げをかさ上げすれば、株価に反映され、それが自分の保有する株価を上げることにもつながるからだ。こうした不正を見抜くのは簡単ではないが、結局、問われているのは経営者の倫理観と誠実性なのである。
- ■取材協力
日本総合研究所
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