M&Aでも幸せになれる?
■ケース「対等統合とは名ばかり! 情報機器小規模メーカーの3社合併」
情報機器の小規模メーカーであるD社、E社、F社は、企業規模拡大による収益の向上を目的に合併した。記者会見でも、社内発表でも「対等統合」と公表されていた。しかし、実質的には規模の大きいD社が主導することが決まっており、人事も業務ルールもコンピュータシステムもD社に合わせることになる。
コンピュータシステムの統合に関しては、事前にE社とF社の意見の聴取も行なわれたが、それは形式だけのものだった。E社やF社にとって、D社のシステムは運用しにくいものでしかなく、結局、両者はD社のシステムと自社の旧システムを平行して走らせることになる。その結果、システムエンジニアの手間は倍増するはめになった。
両ケースとも、システム部門への相談や意見が吸い上げられることなく、M&Aが進められたことが失敗の原因の1つであった。また、増岡氏は「経営陣にM&A後のビジョンがないことが根本的な問題だ」と語る。では、システムエンジニアやシステム管理者は、ただ経営陣が下す判断に身をゆだねるしかないのか。
「システムの経験のない経営陣は、システム統合を『単なる複数のシステムの接続』と考えています。システム担当者が果たす役割りについても理解していません。それに対して『意識を持ってほしい、理解してほしい』と呼びかけても無駄です。振り回されないようにするには、『いかにCIOが経営陣と近づくか』にかかっていると言っていいでしょう」
そのためにCIOは、今以上に積極的に経営陣に事業改善のアイデアを上げて日頃から信頼を得ることが必要になるという。
「いちシステム担当者に限っては、上司であるシステムの責任者に頼るしかありません。ただし、たとえM&Aで被害を受けたとしても、それは貴重な経験になることは間違いありません。M&Aの状況下で、存在感を示せるシステムの責任者を目指せばいいのです」
(次ページ、「コンサルタント・インタビュー」へ続く)
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