これは取材を通して知ったことだけど、社会的地位の高い方たちのあいだでは、5万、10万の贈り物というのは別段特別なことではないそうで、ただ、そういう金額になるとむしろ、
「何を贈ったら喜ばれるかわからない」
という問題があるらしいんですね。陶芸家が作った妙な壷とか贈っても、相手が趣味じゃないってことも多いにありうる。で、そんな「ニッチだけど確実にあるニーズ」に応えたのがGIFCOMのカタログが成功した理由だったらしい。ちなみにGIFCOMさんの場合、10万円のギフトカタログというのが最高価格なんだけど、これ、数は決して多くはないけど毎月確実に使われていくらしい。すごい世界もあったものです。
まあ、そのあたりのGIFCOMさんのビジネスモデルについては本誌でお読みいただくとして、ここでは本誌で触れなかった小ネタなど。
GIFCOMのギフトカタログには、お酒やワイン、季節の食材、花やグリーンに雑貨といった通常の選択肢に加えて、温泉の宿泊、ディナークルーズ、ゴルフ場の利用券、高級エステでの施術、果てはダイビング、シーカヤック、ロッククライミングから屋久島でのトレッキングにいたるまで、ギフトの選択肢として載せているわけですが(誰かわたしにGIFCOMのカタログください。当方、久しぶりにダイビングに行きたし)、社内で企画を立案するにあたって、
「これを載せても、誰も選択しないんじゃ……」
という案も、あることにはあるらしい。
わたしは「ロッククライミング」がそれじゃないかと取材前にあてをつけていたんだが、GIFCOMの社内的にいちばん議論として沸騰したのが、
「りんごの木のオーナー権」
というものだったんだそうです(ちなみにロッククライミングは、特に議論もなくギフトカタログに掲載になって、普通に受けたらしい)。
果たして、りんごの木のオーナーになりたい人はいるのか。
と、思ったら、これがけっこうなヒット商品になったというから驚く。贈られた相手のデータはわからないから、どんな層に、どういう理由で受けたのかは想像の範囲内でしかないので断定はできないそうだけど、わたしが思うに、これ、年配の人に受けたんじゃないのかと思う(GIFCOMの人も同意見だった)。自分が亡くなったあとにも受け継がれていくりんごの木というのは、ある年齢になると何か心に響くものがあるのではと思った次第です。ためしにわたしの母親、70代に、
「りんごの木のオーナー権というものを贈られたら嬉しい?」
と尋ねてみたところ、
「嬉しい! ついでにその木の下に埋葬して欲しい」
と真顔で言われて弱った。
わたしは去年に父を亡くして、残念ながら父の日は不参加の身になってしまいましたが、親が元気なうちにしてあげられることはしておきたいよなと思いながら、今年の母の日はどうしようとあれこれ頭を悩ませるのでありました。
ちなみにGIFCOMさんのカタログは、全国のイトーヨーカドー、イオンなどで取り扱いしています。
それでは皆様、また来月。
(名称・数字・肩書等は取材当時のものです)
この連載の記事
-
第13回
デジタル
高級施設専門の宿泊予約サイト「一休.com」が伸びるワケ -
第12回
デジタル
シストレFXグランプリの収録現場に潜入してきた -
第11回
デジタル
萌えアニメで町おこし!? 埼玉県鷲宮町の取り組みを見てきた -
第9回
デジタル
アキバをプロデュース! 再開発プロジェクトの仕掛け人に迫る -
第8回
デジタル
エールで大手酒造に挑む~ビール工房ヤッホー・ブルーイングの戦略に迫る -
第7回
デジタル
インターネットで選挙は変わるか? 神田敏晶さん流選挙活動を追ってみた -
第6回
デジタル
セレクトショップの集合体「ZOZOTOWN」に、伸びるECサイトのカギをみた -
第5回
デジタル
インターネットの風評被害調査サービスってどんな感じ? -
第4回
デジタル
セカンドライフ講座に人が集まる理由を見てきた -
第3回
デジタル
なにをやってもマイルが貯まる! ポイントサービス新時代 - この連載の一覧へ