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ベストセラーがビジネスの未来を創る ― 第5回

「ラクして飛躍したい」が時代のキーワード

2007年08月01日 00時00分更新

文● ビジネス書評家・土井英司

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本連載では、ビジネス書評家・土井英司が、毎月のビジネス書ランキングを分析し、現在のベストセラーから未来のビジネストレンドを解説する。

「ラクして飛躍したい」が時代のキーワード

2007年7月 ビジネス書ベスト10

1位働かないで年収5160万円稼ぐ方法
2位投資信託にだまされるな!
3位「心のDNA」の育て方
4位頭の回転が50倍速くなる脳の作り方
5位なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?
6位人は「暗示」で9割動く!
7位環境問題はなぜウソがまかり通るのか
8位できる人の勉強法
9位チャンスがやってくる15の習慣
10位生き方

ランキングの詳細▼

新種のビジネス書が異常発生中

 ビジネス書評家の土井英司です。今年は蝉が異常発生しているそうですが、ビジネス書の世界でも、これまで売れなかったようなタイトルがベストセラーのランキングの中に異常に増えています。

 今回は、2007年7月のベストセラートレンドを分析していきましょう。今月のランキングで目立つのは、「ラクして飛躍したい」ニーズに基づいた本が上位に来ているということ。

働かないで年収5160万円稼ぐ方法
著者:川島 和正
出版社:アスコム
価格:1365円(税込)
ISBN-13:978-4776204176

 具体的には、2007年7月のビジネス書ベストセラーランキング第1位となった川島和正氏の『働かないで年収5160万円稼ぐ方法』。川島氏は「日本一のメルマガアフィリエイター」という肩書きを持っています。他にも、第4位、脳機能学者・計算言語学者である苫米地英人氏著の『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方』や第14位コンサルタント会社社長、本田直之氏の『レバレッジ・シンキング』などが登場しています。

 個人的には、そんなに甘い話はないよ、と申し上げたいのですが(笑)、人間は自分に都合のいい話を信じるもの。とくにメディアが発達した今日では、彗星のように現れた大富豪や成功者たちを見る機会が増えていますから、みなさんそのような意識に変わっているのでしょう(実際にはその人たちもかなりの準備期間を経てそこにいたっているのですが)。

 しかも面白いのは、これらの本がいずれも「薄い」ということ。つまりページ数が少ないのです。7月のベストセラータイトル20点のなかで、200 ページ未満のものは何と11点。250ページ以上の本は藤巻健史氏の『マネ-はこう動く』と村上 龍氏の『カンブリア宮殿村上龍×経済人』のみです。以前から、ウェブが普及することによって、読む人の忍耐力がなくなる、などの指摘がなされていましたが、それがいよいよ本格化していることがわかります。

 ちなみに、書籍以外でも、男性ビジネスマン向けフリーペーパー『R25』のように、記事をパッチワーク形式でまとめた媒体がヒットするなど、着実に若者の忍耐力は奪われています。

人が安きに流れ、射幸心をあおるビジネスが隆盛となる

 では、これらの本には、具体的にどんな内容が書かれているのでしょうか。今回、No.1に輝いた『働かないで年収5160万円稼ぐ方法』を見てみましょう。

 読者が本を買う動機のほとんどはまえがきに書かれていますので、そこを中心にご紹介すると、太字でこんなことが書かれています。「昨年のある日、インターネットでたまたま見かけた情報がきっかけになり、私の人生は変わりました。その情報を見た私は、『楽して儲ける方法』があることを知ってしまった」。その結果、著者はどうなったか。本人のコメントによると、「1年もたたないうちに月500万円(!)も稼げるようになってしまった」のだそうです。

レバレッジシンキング
著者:本田 直之
出版社:東洋経済新報社
価格:1523円(税込)
ISBN-13:978-4492042809

 この本には、ほかにも「リスクがほとんどなく、面倒ではない、誰にでもできる方法」「面倒なしにOLの25倍稼ぐ」などの言葉が躍っており、いずれも見出しあるいは太字で示されています。

 具体的な内容としては、「オークション」「アフィリエイト」「情報ビジネス」が3本柱となっており、それぞれの具体的なやり方が書かれています。

 14位にランクインされた『レバレッジ・シンキング』も、「少ない労力で大きな成果を生み出す最強・最速の仕事術」と謳うなど、見事に「ラクして飛躍したい」ニーズを刺激しています。こちらは、割とオーソドックスな仕事術や時間術を説いていますが、やはり「不労所得」や「収入が倍」といった目標が掲げられており、極めて実利的な考え方が示されています。

 世の中が、このように安きに流れるとどうなるか。射幸心をあおるビジネスが隆盛となり、その結果、破産する人が増えます。その流れは、ギャンブル業界、消費者金融業界、そしてその問題を解決する自己破産専門の弁護士業の活況からも読み取れますが、今後はその流れが、他の産業にも及ぶと思います。

 その結果、「ラクして痩せられるダイエット食品」「少額投資で儲かる金融商品」など、「ラクして飛躍」できそうな(しかし実はリスクが高い)商品・サービスが流行り、その結果起こりうる問題にまでビジネスチャンスが及ぶ、といえそうです。もっとも、こういったブームは一過性のものに終わることも多いようですが……

2007年7月 ビジネス書ランキング

2007年7月 ビジネス書ランキング

1
働かないで年収5160万円稼ぐ方法
川島和正(アスコム)
2
投資信託にだまされるな!
竹川美奈子(ダイヤモンド社
3
「心のDNA」の育て方
石井裕之(フォレスト出版)
4
頭の回転が50倍速くなる脳の作り方
苫米地英人(フォレスト出版)
5
なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?
パコ・ム-ロ(ゴマブックス)
6
人は「暗示」で9割動く!
内藤誼人(すばる舎)
7
環境問題はなぜウソがまかり通るのか
武田邦彦(洋泉社)
8
できる人の勉強法
安河内哲也(中経出版)
9
チャンスがやってくる15の習慣
レス・ギブリン(ダイヤモンド社)
10
生き方
稲盛和夫(サンマーク出版)
11
鏡の法則
野口嘉則(総合法令出版)
12
コミック鏡の法則
野口嘉則(総合法令出版)
13
世界一やさしい問題解決の授業
渡辺健介(ダイヤモンド社)
14
レバレッジ・シンキング
本田直之(東洋経済新報社)
15
「心のブレ-キ」の外し方
石井裕之(フォレスト出版)
16
何のために働くのか
北尾吉孝(致知出版社)
17
マネ-はこう動く
藤巻健史(光文社)
18
「できる人」の話し方&人間関係の作り方
箱田忠昭(フォレスト出版)
19
ワ-キングプア
NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班・編(ポプラ社)
20
カンブリア宮殿 村上龍×経済人
村上龍(日本経済新聞出版社)

(日販オープンネットワーク調べによるビジネス書に絞ったランキング。集計期間は2007年7月1日~31日)

土井 英司 (どい えいじ)
ビジネス書評家 / 出版マーケティングコンサルタント / メルマガ「ビジネスブックマラソン」編集長
慶應義塾大学総合政策学部卒。日経ホーム出版社を経て、2000年にAmazon.co.jp立ち上げに参画。 ビジネス・実用書の「陰の仕掛け人」として、『ユダヤ人大富豪の教え』(本田健・著、40万部突破)を始め、数々のベストセラーのきっかけを作った。近著に『「伝説の社員」になれ!』(草思社)がある

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