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ベストセラーがビジネスの未来を創る ― 第9回

2008年、ビジネス書も古典復活の動きが見える

2007年12月01日 00時00分更新

文● ビジネス書評家・土井英司

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本連載では、ビジネス書評家・土井英司が、毎月のビジネス書ランキングを分析し、現在のベストセラーから未来のビジネストレンドを解説する。

2008年、ビジネス書も古典復活の動きが見える

2007年1月~11月 ビジネス書ベスト10

1位「1日30分」を続けなさい!
2位鏡の法則
3位できる人の勉強法
4位「心のブレ-キ」の外し方
5位世界一やさしい問題解決の授業
6位生き方
7位環境問題はなぜウソがまかり通るのか
8位働かないで年収5160万円稼ぐ方法
9位人は「暗示」で9割動く!
10位投資信託にだまされるな!

ランキングの詳細▼

 こんにちは、土井英司です。早いもので、気がついたらもう年末ですね。今月は年末の特別号ということで、2007年のビジネス書のトレンドの総括と、2008年の傾向について予測したいと思います。

ザ・シークレット
著者:ロンダ・バーン
訳者:山川 紘矢、山川亜希子、佐野 美代子
出版社:角川書店
価格:1890円(税込)
ISBN-13:978-4047915572

 まず、2007年の総括からです。

 今年のトレンドを支えたキーワードとして「格差」がありました。おもしろかったのは、この「格差」が、従来の「経営者とサラリーマン」ではなく、サラリーマン同士の格差であったこと。もろもろその弊害は指摘されながらも、成果主義が本格化して、サラリーマンでいながら高給を狙える可能性が高まってきました。

 逆に、ホリエモンを象徴とするITバブルの崩壊とその後の情報起業ブームの終焉は、多くのサラリーマンから「起業」という選択肢を奪ったと考えています。

 2001年のベストセラー、ロバート・キヨサキさんの『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』(筑摩書房)は、カンパニーオーナ―もしくは投資家にならないと豊かにはなれないと説きましたが、起業ブームが終焉し、株価が低迷した今年、日本人が選んだのは、雇われながらお金持ちになる路線でした。結果として今年は勉強本がブームとなったわけです。

成功はゴミ箱の中に
著者:レイ・クロック、ロバート・アンダーソン
訳者:野崎稚恵
出版社:プレジデント社
価格:1500円(税込)
ISBN-13:978-4833418454

 興味深い傾向としては、「若くして成功を収めた人」の本がよく売れています。

 古市幸雄さんの『「1日30分」を続けなさい!』(マガジンハウス)、渡辺健介さんの『世界一やさしい問題解決の授業』(ダイヤモンド社)、佐藤可士和さんの『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞出版社)など、挙げればきりがありませんが、ここから若い人が短期間で成功しようとする様子がうかがえます。

 この傾向は近年続いており、2004年前後に「手帳ブーム」が来たときにも、GMOインターネットの熊谷正寿さんやワタミの渡邉美樹さんなど、若くして成功した方の手帳や日記がよく売れました。雇用の流動性が高まり、先輩・後輩の関係も希薄になった今、若者たちは、職場でメンターに当たる人がいなくなっています。このことは、外部にメンターを求める現在の傾向にますます拍車をかけるでしょう。

 若くして成功した著者や自分の理念やスタイルをしっかり持って活躍している著者には、来年以降も大きなチャンスが待っていると思われます。

スピリチュアル本ブーム到来の兆し

 また、10月後半発売のため、ランキングには載ってきませんでしたが、ロンダ・バーンさんの『ザ・シークレット』(角川書店)が売れています。また、その中で紹介されている「引き寄せの法則」の関連書もヒットしており、来年のスピリチュアルブームの到来が予想されます。

 ご存知の方も多いと思われますが、この『ザ・シークレット』は、2006年に発売され、全世界で860万部売れたというビッグタイトル。アメリカの自己啓発書の著者が集まってオムニバス形式で書いた本で、内容は従来の自己啓発書よりも一歩スピリチュアルに近づいた格好です。不安の増大する世の中では、決まってスピリチュアルものが流行るわけですが、本書はそのきっかけを作ったと言えます。

 早くから雇用の不安が常態化しているアメリカでは、この手の自己啓発書がかなり前からブームになっていました。しかし、いくらアメリカでミリオンセラーであっても、スピリチュアルは日本では売れない、と以前は言われていました。それがここに来て売れているというところに、現在の日本社会の闇を感じます。

 現在のようにストレスが多い環境下では、人は「躁」と「うつ」を繰り返すわけですが、やる気がある時には勉強本が、元気をなくした時にはスピリチュアルが売れる、という基本構造は来年以降も続くと考えられます。

 また、今年はビジネス書の粗製乱造がかなり目立ったので、従来の本好きは、一部古典名著の見直しに走るかもしれません。

 今年は、光文社古典新訳文庫シリーズの『カラマーゾフの兄弟』『走れメロス』など、新訳・新装版が売れました。ビジネス書の復刊モノで売れ線と言うと、レイ・クロックさんの『成功はゴミ箱の中に』やバルタザール・グラシアンさんの『バルタザール・グラシアンの「賢人の知恵」』などです。

 この古典復活の動きが、2008年ビジネス書の世界にも起こっていくのではないでしょうか。

2007年1月~11月 ビジネス書ランキング

1
「1日30分」を続けなさい!
古市幸雄(マガジンハウス)
2
鏡の法則
野口嘉則(総合法令出版)
3
できる人の勉強法
安河内哲也(中経出版)
4
「心のブレ-キ」の外し方
石井裕之(フォレスト出版)
5
世界一やさしい問題解決の授業
渡辺健介(ダイヤモンド社)
6
生き方
稲盛和夫(サンマーク出版)
7
環境問題はなぜウソがまかり通るのか
武田邦彦(洋泉社)
8
働かないで年収5160万円稼ぐ方法
川島和正(アスコム)
9
人は「暗示」で9割動く!
内藤誼人(すばる舎)
10
投資信託にだまされるな!
竹川美奈子(ダイヤモンド社)
11
チャンスがやってくる15の習慣
レス・ギブリン(ダイヤモンド社)
12
餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
林総(ダイヤモンド社)
13
かんたん年賀状素材集
技術評論社 編集部(技術評論社)
14
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?
小堺桂悦郎(フォレスト出版)
15
金持ち父さん貧乏父さん
ロバ-ト・キヨサキ(筑摩書房)
16
佐藤可士和の超整理術
佐藤可士和(日本経済新聞社)
17
スタバではグランデを買え!
吉本佳生(ダイヤモンド社)
18
なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?
パコ・ム-ロ(ゴマブックス)
19
成功はゴミ箱の中に
レイ・クロック(プレジデント社)
20
何のために働くのか
北尾吉孝(致知出版社)

(日販オープンネットワーク調べによるビジネス書に絞ったランキング。集計期間は2007年1月1日~11月30日)

土井 英司 (どい えいじ)
ビジネス書評家 / 出版マーケティングコンサルタント / メルマガ「ビジネスブックマラソン」編集長
慶應義塾大学総合政策学部卒。日経ホーム出版社を経て、2000年にAmazon.co.jp立ち上げに参画。 ビジネス・実用書の「陰の仕掛け人」として、『ユダヤ人大富豪の教え』(本田健・著、40万部突破)を始め、数々のベストセラーのきっかけを作った。近著に『「伝説の社員」になれ!』(草思社)がある

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