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ベストセラーがビジネスの未来を創る ― 第3回

真実を知りたい、というニーズが売りをつくる!

2007年06月01日 00時00分更新

文● ビジネス書評家・土井英司

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本連載では、ビジネス書評家・土井英司が、毎月のビジネス書ランキングを分析し、現在のベストセラーから未来のビジネストレンドを解説する。

真実を知りたい、というニーズが売りをつくる!

2007年5月 ビジネス書ベスト10

1位環境問題はなぜウソがまかり通るのか
2位できる人の勉強法
3位人は「暗示」で9割動く!
4位投資信託にだまされるな!
5位鏡の法則
6位チャンスがやってくる15の習慣
7位生き方
8位「できる人」の話し方&人間関係の作り方
9位「心のブレ-キ」の外し方
10位何のために働くのか

ランキングの詳細▼

真実を知りたい読者が急増中

 ビジネス書評家の土井英司です。最近、暑くなってきましたね。

 第3回は、2007年5月のベストセラートレンドを分析します。今回も、ベストセラーの背後に社会の変化が見て取れます。今注目のタイトルを軸に、さっそく見ていきましょう。

環境問題はなぜウソがまかり通るのか
著者:武田 邦彦
出版社:洋泉社
価格:1000円(税込)
ISBN-13:978-4862481221

 今月のランキングで目立つのは、「真実を知りたい」というニーズに応えた本が上位に来ているということ。

 具体的には、5月のビジネス書第1位で、テレビの討論番組でも取り上げられた武田邦彦さんの『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』。そして第3位、ファイナンシャルプランナー竹川美奈子さんの『投資信託にだまされるな!』などです。

『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』は、名古屋大学大学院教授や内閣府原子力安全委員会の専門委員などを歴任した武田邦彦さんが書いたということで、大きな話題となっています。

 たとえばこの本によると、ペットボトルのリサイクルがほとんど機能しておらず、さらには利権団体を潤わせるのに使われているそうです。毎日毎日ごみを分別している我々にしてみたら、多くのペットボトルがリサイクルされず焼却されている、というのは驚くべき実態です。ほかにも、ダイオキシンをめぐる誤解や、「北極の氷が溶けると海水面が上がる」という見解の問題点など、環境問題をめぐるさまざまなタブーに挑んだ、大問題作なのです。

投資信託にだまされるな
著者:竹川 美奈子
出版社:ダイヤモンド社
価格:1575円(税込)
ISBN-13:978-4478000243

 もうひとつの『投資信託にだまされるな!』も、欧米に比べて手数料や信託報酬が高く、高いリターンが望めない日本の投資信託のひどい実態を明らかにし、話題となった一冊。

 たとえば「分配金をもらっても資産の総量は増えないし、税金もひかれる」と人気の「毎月分配型投信(毎月分配金が入る投信)」の落とし穴を指摘しています。ほかにも複数の投信に投資する「ファンド・オブ・ファンズ」という商品が、手数料が高く成績が芳しくないような投信が組み込んでいる場合があることに触れ、「売れない投信の在庫処分をしている」と評するなど、関係者が青ざめてしまうような内容が、ズバリ書かれています。

 書籍の世界では、必ずしも暴露系の本が売れるわけではないのですが、なぜ今ここに来て、この手のタイトルが売れているのでしょうか?

 土井が考えるにそれは、インターネットという新しいメディアがもたらした、新たな「不安」が原因です。

インターネットは2次情報を伝えるメディア

 みなさんが同意されるかどうかわかりませんが、これまで雑誌やWeb媒体、メールマガジンなど様々なメディアを扱ってきた土井から見たら、インターネットはおもに「2次情報を伝えるメディア」です。

 その証拠に、ブログの書き込み数をから「今日の注目の話題」ランキングを提供している「kizasi.jp」を見ると、トップの話題はいつも「Yahoo!ニュース」やその他の媒体で取り上げられたニュースの2次情報。

 つまり、一度ニュースで取り上げられた情報がインターネットを通じて瞬時に広くばらまかれる。情報の判断能力がなければ、鵜呑みにするしかない状況なのです。

 もし元となっている情報源が間違っていたらどうでしょうか? しかもそれが自分の生命やお金に直結している問題だったとしたら?

 この目に見えない不安が、多くの人に「真実を知りたい」という強い欲求を起こさせているのです。

いまこそ誠実な情報発信を

 先ほど挙げた2つのタイトルも、この「真実を知りたい」欲求に応えたことが勝因。しかも、テーマは環境問題と投資信託。両方とも、これまで聖域とされ、誰も切り込めなかった領域です。だからこそ話題となるのです。

 このような本が売れる背景には、前述したように、人々の漠然とした不安があります。人々が情報の信憑性を疑い始めた時代だからこそ、誠実に正しい情報を発信している企業が有利。大企業が不祥事を起こしている今が、顧客や世間から信頼を獲得するチャンスなのです。

 インターネット時代でも、やはり商売の王道は「信用を得ること」だと言えるのでしょう。

2007年5月 ビジネス書ランキング

1
環境問題はなぜウソがまかり通るのか
武田邦彦(洋泉社)
2
できる人の勉強法
安河内哲也(中経出版)
3
人は「暗示」で9割動く!
内藤誼人(すばる舎)
4
投資信託にだまされるな!
竹川美奈子(ダイヤモンド社)
5
鏡の法則
野口嘉則(総合法令出版)
6
チャンスがやってくる15の習慣
レス・ギブリン(ダイヤモンド社)
7
生き方
稲盛和夫(サンマーク出版)
8
「できる人」の話し方&人間関係の作り方
箱田忠昭(フォレスト出版)
9
「心のブレ-キ」の外し方
石井裕之(フォレスト出版)
10
何のために働くのか
北尾吉孝(致知出版社)
11
働かないで年収5160万円稼ぐ方法
川島和正(アスコム)
12
餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
林 総(ダイヤモンド社)
13
あたりまえだけどなかなかできない仕事のル-ル
浜口直太(明日香出版社)
14
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?
小堺桂悦郎(フォレスト出版)
15
会社の数字に強くなる本
石上芳男(かんき出版)
16
ビジョナリ-・ピ-プル
ジェリー・ポラス、スチュワート・エメリー、マーク・トンプソン(英知出版)
17
細野真宏のニュ-スでわかる世界一わかりやすい
細野真宏(文藝春秋)
18
国家と神とマルクス
佐藤 優(太陽企画)
19
なぜ、あの占い師はセ-ルスが上手いのか
森下裕道(フォレスト出版)
20
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか? 決算書編
小堺桂悦郎(フォレスト出版)

(日販オープンネットワーク調べによるビジネス書に絞ったランキング。集計期間は2007年5月1日~31日)

土井 英司 (どい えいじ)
ビジネス書評家 / 出版マーケティングコンサルタント / メルマガ「ビジネスブックマラソン」編集長
慶應義塾大学総合政策学部卒。日経ホーム出版社を経て、2000年にAmazon.co.jp立ち上げに参画。 ビジネス・実用書の「陰の仕掛け人」として、『ユダヤ人大富豪の教え』(本田健・著、40万部突破)を始め、数々のベストセラーのきっかけを作った。近著に『「伝説の社員」になれ!』(草思社)がある

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