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エンジニアのための文章上達塾 第2回

第3回 病気にかかった文章をしっかり治そう~初級~

2008年04月14日 14時00分更新

文● 福田 修

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正しい文への道のりは遠い? 伝えたい意味で文章をきちんと書く

 さて、ここまでの分析はあくまで文法的な視点からのものです。しかし、この文章の作成者はそもそも何をプロジェクトマネージャーに伝えたかったのでしょうか。「意味上、正しいかどうか」の検証しなくてはなりません。もし、この文章を書いた人が「不正アクセスによってFTPサーバに何らかのウイルスが侵入し、それが障害を引き起こした」ということを書きたかったのであれば、次のように記すべきだったはずです。

「1カ月前にFTPサーバへ侵入して障害を引き起こしたウイルスプログラムは」

 この修正した文章を前提にして、再度文章を組み立てます。すると、

「1カ月前にFTPサーバへ侵入して障害を引き起こしたウイルスプログラムは、不用意に空いていたポートから侵入したものである。」

となります。ところが、まだまだこの表現には4つの病気があります! 分かるでしょうか。

1.ポートは自分で勝手に空いたりしない(技術の文章では原則受け身表現はしないものなので、「不要に空けていたポート」とすべき)

2.プログラムがポートから侵入したわけではない(この文のままでは、プログラムが自然にポートから侵入したことになってしまう。「不用意に空けていたポートから不正アクセスが行なわれ」とすべき)

3.侵入された結果がどうなったのか書いていない

4.ポートに不正なアクセスをしたのは誰なのか書いていない

 これらの問題点を総合してこの部分を直すと、次のようになります。

「一カ月前にFTPサーバへ侵入して障害を引き起こしたウイルスプログラムは、不用意に空けていたポートから悪意のある第三者の手によって侵入したものである。その結果FTPサーバのシステムがウイルスに感染した。」

チェック③ 主部と述部をが合っていない

 最後に、赤ペンチェックの③「ポートスキャンは既に数カ月前から行なっており、事前に察知可能である」は、チェック②を理解した皆さんには簡単に理解できると思います。前述のように、書類文章などでは誰が何をしたのかはっきり示されなければなりません。まず、このままでは「行なっている」という述部にかかる主部が「ポートスキャン」であるかのような表現になっています。ポートスキャンを行なったのは悪意のある第3者です。また、加えて言うと「事前に察知可能である」という表現は、察知する主体が表現されておらず、また時制が現在あるいは未来を表わしています。表現しようとしているのは過去のことであるはずですので、この部分も直しましょう。

「この悪意のある第3者は既に数カ月前からポートスキャンを行なっており、当社側で事前に察知することは可能であった。」

 これでようやく治療が終わりました。プロジェクトマネージャーが頭を抱え込んだ理由が分かりましたでしょうか。次回も、基礎的な治療法を紹介します。

■正解文

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筆者紹介──福田 修

(株)CSK、日本インフォメーションエンジニアリング(株)を経て、テクノロジー・オブ・アジア(株)設立、代表取締役に。適切な情報技術の動向把握に長け、2000年問題の効果的解決、インドのSI会社との提携、Webアプリケーションへの取り組み、オブジェクト指向設計/開発の導入等を、早い時期から対応し、後発システムベンダへの指導的立場にある。著書に『SEを極める仕事に役立つ文章作成術』(日経BP社発行)がある。

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