「先日『アキバビジネスを考える』というシンポジウムがあって、パネルディスカッションのときに、それを皆に言ったんです。『みんな、秋葉原は成長すべきだと思うか、発展すべきだと思うか』と聞いたわけです。
成長っていうのは、子どもみたいなものです。子どもは猿になるわけでも鳥になるわけでもなく、人間としてそのまま身体が大きくなっていきますよね。このような現状モデルの量的拡大が成長。他方、発展はサナギが蝶に変わるとか、おたまじゃくしが蛙に変わるとか、モデル自身が変わっちゃうこと。で、ここで言ってるモデルとは何かというと、日本語で優しく言えば、仕組み・仕掛け・仕切り。おたまじゃくしのときの身体機能・構造・生き方と、蛙の機能・構造・生き方は全然違うでしょ? あるいは青虫のときと蝶はまったく違いますよね。これが、モデルが変わるということなんです。
いま僕が思っているのは、日本はモデルを変えなきゃいけない時期に来ているということ。企業ならば従来のモデルを一生懸命磨き上げたり、生産性を向上させるのではなく、モデルを変えなきゃいけない。大学も少子化の時代になったら、従来のモデルでやっていけるわけはなくて、モデルを変えたほうがいいんじゃないの? と」
それでは先生、秋葉原は「成長」すべきなんでしょうか、「発展」すべきなんでしょうか。そんな我々の問いに、妹尾先生はこう答えた。
「秋葉原っていままで成長してきたんだろうか、発展してきたんだろうか。こういう問いかけになるわけです。ある意味で成長、ある意味で発展という、非常にユニークなポジションなんです、秋葉原って。というのは、ラジオ街だと思ったら電気街へ発展して大きくなったでしょ? で、その電気街からパソコン街へ発展してまた大きくなった。そしていま、さらに次の段階に移行しようとしている。
ただし、そのときに完全に変わるわけじゃなくて、必ず前は残る。ラジオ街の部分も電気街の部分も、まだ残ってますよね。だからこれは、完全な入れ替えのモデル転換ではなくて、重層化なんです。これこそが秋葉原のユニークネスですよ。
ラジオ街から積み重なった伝統が片方にあって、もう片方に先端がある。その両者があることが秋葉原の面白み。秋葉原は常に先端を走っている。でも常に、過去から来るテクノとサブカルチャーの伝統も残している。だからいま、これだけの人が集まっているんです」
街づくりはまず、街のアイデンティティを考え抜くこと。それから「成長」を選ぶか「発展」を考えるかを選択しなければならないということがわかった冬の一日だった。
そんなところで今月のWeb版はおしまい。それでは皆様、本誌のほうでもお会いしましょう。
(名称・数字・肩書等は取材当時のものです)
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