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業界研究レポート 第1回

人材業界

大揺れ人材業界! 業界5位が1位を買収した背景とは

2008年02月22日 12時00分更新

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グッドウィルの栄枯盛衰を検証

 2006年当時、グッドウィルグループの売上高が1859億円(2006年6月期)であるのに対し、クリスタルグループの売上高は5911億円(2006年3月期)と3倍以上の規模であった。ただし、クリスタルはグループの子会社であるコラボレートが偽装請負(注1)を繰り返していたとして、同年10月に事業停止命令を受けている。クリスタルは以前にも派遣社員の過労自殺や申告漏れなどの不祥事が起きており、それを組織改変や子会社の解散などで対処していた。そうしたコンプライアンス軽視の体質が問題視される中での事業停止命令は、得意先企業と人材の“クリスタル離れ”を加速させる結果となる。拡大を目指すグッドウィルによる買収は、まさに渡りに船だったのだ。

注1:請負と偽装請負
請負は社外労働者への指揮命令権および使用責任や安全義務を、業務委託を受けた請負会社が負う契約。派遣であれば企業が社外労働者へ指揮命令できるが、同時に責任や義務も負わねばならない。「偽装請負」は請負契約であるにも関わらず、企業が社外労働者へ指揮命令する行為で、労働者の使用責任や安全義務の所在があいまいになるケースが多い。

 かくしてグッドウィルは一躍、人材派遣業界のトップ企業となった。買収から間もない2006年12月、西武ドームと西武ライオンズ二軍チームの命名権を取得。また、コマーシャルの大量投入などによって人材を確保し、2007年6月期の売上高を5090億とした。その他、同年5月には、クリスタルの社名をグッドウィル・プレミアに変更、開業する東京ミッドタウンへの移転を発表するなど、順調に勢力拡大が進んでいるかに見えた。

 だが、グッドウィルグループの福祉介護会社のコムスンが、介護報酬の不正請求を行なったことが発覚し、2007年4月に業務改善勧告を受ける。その後、都内の3事業所が不正に事業所指定を得ていたとして指定取消処分されようとしたとき、その事業所を廃業することで処分を逃れた。この悪質な処分逃れが全国の事業所で行なわれていたことから、厚生労働省は6月にコムスンの事業所指定と更新の受付停止を発表。窮地に追い込まれたコムスンは、全事業を同じグッドウィルグループの日本シルバーサービス(当時)に譲渡するとした。この行為は世の批判を大いに集め、また厚労省も撤回するよう行政指導。結果、グッドウィル・グループはすべての介護事業および介護関連事業を、他社に譲渡することになった。

 この騒動に加え、派遣スタッフの給与から「データ装備費」名目で勤務1回あたり200円を天引きしていた問題などによって、グッドウィルの「クリスタルと変わらない企業体質」が広く知れわたり、“グッドウィル離れ”に拍車がかかった。さらに今年1月、禁止されている二重派遣を行なったことなどから、グッドウィルの全708事業所に2~4カ月の事業停止が命じられるなど、不祥事の露見と業績悪化は続いている。また、クリスタル買収時の借入金も重く圧し掛かっている。

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