プロジェクトの途中にこそ、リスク・マネジメントは必要
このリスク分析は、プロジェクトのスタート時にはしっかり行なわれているようですが、プロジェクトの途中ではあまり行なわれていないようです。そのため、途中で発生するリスクについては対策が練られておらず、トラブルが起きたときに対応する問題解決型のマネジメントになってしまいます。プロジェクトは進行していくに従って状況が変わっていくもので、それに合わせてリスクも変化します。したがって、プロジェクトの途中にもリスク分析をし、対策を立てる必要があります。定例の会議の中で、進捗について報告するだけでなく、リスクについても話し合う機会を作るとリスクを共通認識できることでしょう。プロジェクトの全体を通して、リスクについて分析予測し、対策を立て、リスクを追跡することで、はじめてリスク・マネジメントができていると言えるのです。
リスクを「ゼロ」にするという間違った発想
リスク・マネジメントの目的は、リスクをゼロにするのが目的ではありません。その影響を最小限に抑えることにあります。リスクの判断基準は0%か100%ではなく、五分五分でその五分のリスクについて小さくする対策を取るという考え方が必要です。
プロジェクトのリスク・マネジメントでよく起こる問題としては、人材の確保があります。たとえば、あるプロジェクトの成功にはAというエンジニアの技術が必要だとします。そのエンジニアAは、現在別のプロジェクトに関わっていて、終了後にプロジェクトに参加してくれる段取りになっています。このケースでは、リスクの1つとして「先のプロジェクト作業が延びてエンジニアAがプロジェクトに参加できなくなる」ことが考えられます。この場合は、今関わっているプロジェクトのマネージャーに、エンジニアAが次のプロジェクトに必ず必要であることをしっかり伝えプレッシャーを与えたり、もしものことを考え、エンジニアAの次に適任だと思われるエンジニアBの手当をするのがリスク・マネジメントです。こうしてプロジェクトのリスクを小さくしていくのです。
リスクはゼロにはならないし、ゼロを目指すというものでないことは先に解説しましが、「新技術適用を検討する」プロジェクトでは、新技術適用のリスクをゼロにするために、はじめから新技術を諦めるなどの安全な方法ばかりを選択していては、よりよい成果物はできないし、新しいことにチャレンジできません。最善のものを目指しつつ、その中でリスクを小さくしていくのがリスク・マネジメントのあるべき姿と言えるでしょう。
最後に、リスク分析をし、ある事柄がリスクが大きいと判断しても、それを承知の上でプロジェクトを進めていく場合があります。これはプロジェクトマネージャーの判断ではなく、組織としての判断が下された場合です。組織としては上を目指したり、政治的な判断により、リスクを受け入れることが多々あります。このようにリスクについての考え方は、プロジェクトマネージャーの判断を超えるケースがあることを承知しておいてください。
プロジェクト成功のポイント
・リスクについてすべてを洗い出し分析し、重要なリスクを見極め対策を立てなければならない
・プロジェクトスタート時だけにリスク分析をするのではなく、プロジェクトの途中でもリスクを洗い出し分析し、対策を立てる必要がある
・リスクはゼロにすることだけではなく、小さくしていく(チャレンジを忘れずに)
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