株式会社富士通ラーニングメディア
研修事業部シニアインストラクタ
プロジェクトマネージャ
土谷政則さん
プロジェクトを成功に導くには、プロジェクト推進に関する正しい知識と、そして的確な判断と行動が必要不可欠。それを行なうのがプロジェクトマネージャーで、プロジェクト成功の鍵を握る重要な職種だ。しかし、このプロジェクトマネジメントが的確に実施されていないため、プロジェクトが成功に至らないケースも多い。そこで、ありがちなプロジェクトの失敗例に迫りながら、国際資格「PMP(Project Management Professional)」のバイブルとも呼ばれる「PMBOKガイド」をプロジェクト成功のためにどのように役立てるかを、全10回に渡り解説する。
一括作成請負で、いわば「丸投げ状態」
プロジェクトというものは必要な作業のすべてを内部でまかなうことはほとんどなく、外部の手を借りることになります。特に日本のIT業界の場合は、一括作成請負という契約方法で外部に作業を丸ごと任せることがよくあります。それは、発注する案件の専門性が高く、自社に十分な知識や技術を有している人材がいないので、専門家に任せてしまおうという考えによるものです。しかし、そうするといわゆる「丸投げ状態」になってしまい、意図していたものと違う成果物が納品され、「こんなものを頼んだのではない」とトラブルになる場合があります。これでは、調達側は成果物の納品日が遅れてしまうおそれが出てしまうし、納入側には手戻り作業が発生してしまうでしょう。両者ともに不利益が生じるのです。
また、トラブルの原因となるのが、納品時の検収不十分があります。検収を怠ることで、システム稼働後のメンテナンス時に問題が発生するケースとなるのです。この場合、システムがブラックボックスのままなので、トラブルの原因を解明するのが非常に困難となります。
イニシアティブを持ってルールの決定と説明ができていない
プロジェクトというものは、多くの会社が関わります。そして、そこには製品を調達する側と納入する側があり、調達する側にはそれを管理する「調達・マネジメント」が必要となります。PMBOKガイドには「外部の組織(購入者)が実行組織(納入者)からプロジェクトを取得する際に発行する契約書の管理、およびプロジェクト・チームに課される契約上の責務の管理を行なう」と書かれています。つまりプロジェクトの本体が外部からサービスや成果物などを調達する場合、発注、契約などスタート時点から納入まですべての過程で、決められたルールどおりにできているかを管理する必要があるということです。
調達・マネジメントでトラブルが起こるのは、契約管理のときにルール決めがしっかりなされていないからです。何をどのように、いつまでに、そしていくらでということだけでなく、細かい設計ルールや運用の方法なども決める必要があります。そして、これらのことは調達側がイニシアティブを持って行なわなければなりません。しかしながら、冒頭で述べたように、はじめに決めておく必要がある事柄に関して調達側がよくわかっていないケースがあり、その結果「丸投げ」となることが多いようです。
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